■苦しい(ジャ遊)■

ジャ遊。
お休みのキス。









 

ジャックが遊星の前髪を掻き揚げて、其処にキスを落とす。
お休みのキスだ、などと言って、戯れに時折ジャックがするその行為が遊星には苦痛だった。
別にこの行為自体が嫌いなわけではない。
ただ、どうしたらいいかわからなくなるだけだ。
ジャックに触れられた所が自分でもわかるほど熱くて、顔を上げていられなくなる。
どうしてだかジャックを見れなくなる。

何故だがわからないけれど、胸が、苦しくなる。 

「ジャック」
今夜もジャックが触れた其処は熱い。
遊星は手で額を押さえながら呼びかけた。
自分の寝床へ向かおうとしていたジャックが振り返る。
「どうした、遊星」
「・・・お前はオレをガキだと思っているのか」
ラリーが気に入っていてよく遊星の所に見に来る海外のホームドラマに、親が子供にそうするシーンがあった。
「なんだ、子ども扱いが気に入らないのか」
ジャックはすぐそのドラマのことに思い至ったのだろう、からかうような口調で言った。
「そういう、わけじゃない」
「ではどういう訳だ」

対等で居たいと思う気持ちは確かにある。 

だが何故苦しくなるのか、遊星にはわからない。
ただ、この答えを知っているのはジャックだけなのだと。
それだけは確信だった。

しかし其れを上手く言葉にすることが出来ず、結局遊星は口を噤んだ。
胸に塊が詰まっているようで更に苦しい。
「いや、いい・・呼び止めて悪かった」
そう言って踵を返した遊星の腕をジャックが掴む。
その腕を辿って見上げると、ジャックが嗤った。
 「オトナ扱い、してやろう」
 壁に押し付けられた遊星は、ジャックの顔が近づいてくるのをぼんやりと見ていた。
また、額にキスを落とすつもりなのだろうと思った。
しかし予想は外れ、ジャックはやや乱暴に遊星の顎を取ると上を向かせた。
その唇が己の唇に重ねられる。
一度離れ、角度を変えてまた押し付けられる。
口の中に侵入してきたものが、ジャックの舌だということに気がつくまで数秒かかった。
其れが、遊星の舌を捉える。
「ふっ・・・!」
ぞくり、と背中を走った感覚に、遊星は逃げようと身を捩った。
しかしそれはジャックによって阻まれる。
執拗に口内を蹂躙して、ようやくジャックは離れた。
ふらつく身体を壁に預ける。
舌が痺れて、自分のものではないようだった。


胸が苦しくて、息が上手く出来ない。


 「どうだった、初めての『オトナ扱い』は」
揶揄するようにジャックが尋ねるのに、遊星は顔を上げて答えた。
「・・・苦しかった」
ジャックは噴出した。
口を塞がれて上手く息が出来なかったと思ったらしい。
「こういう時は鼻で息をするんだ、遊星」




 そうではない、と告げることも出来ず、遊星は視線を落とした。



END







遊星くんは恋に無自覚、
ジャックは自覚があるけど、言う気はない、みたいなカンジで。
つか私やっぱり遊星くんを天然入ってると思ってるなー。

アニメを見てても両思いなのにすれ違ってるようにしか見えません(^^ゞ



2008.04.25

 

>戻る