■月(ジャ遊)■
ジャ遊。
と言いつつジャック出番ありません(^^ゞ 氷室ちゃんと遊星たん。大会前。
雑賀がサテライトへと発ち、後を任された氷室は、遊星のところへ顔を出した。
雑賀は無事に発ったと伝えるつもりだった。 しかし、部屋の中には誰も居ない。 Dホイールはそのままであるから、遠くへ出かけたということもないだろう。 特に心配することもないだろうが、日も暮れたし、シティでも下層のこの場所は何かと物騒だ。 とりあえずあたりを探してみると、昼間の空き地に遊星は立っていた。 何をしているわけでもない、ただ夜空を見上げている。 氷室と遊星がデュエルをしようとした空き地だ。 そして、キングが―― ジャック・アトラスが乱入してきた、あの広場。 「こんなところに居たのか」 「・・・氷室」 声をかけると、氷室が来たことに今気が付いた、という風にやっとこちらを見た。 だがすぐにまた空に視線を戻してしまう。 「雑賀はサテライトへ発ったぞ」 「・・そうか、すまない」 氷室は遊星の隣に立って、同じように夜の空を見上げた。 空には白く輝く、月。 「月が、好きなのか?」 「・・・好き?」 問うと、遊星は驚いたように氷室を見た。 そんなことを聞かれるとは思っても居なかったらしい。 遊星は少し考えて答えた。 「そうか、好きなのかもしれないな」 何処か他人事のような返答に、氷室が口を開くよりも先に、遊星は言った。 「この街は、せっかくの月の光を街の光で消してしまっている」 確かに夜でも昼のような明るさを誇るこのシティでは、せっかくの星空もくすんでしまっている。 勿体無い話だ。 「だが此処はまだマシだろう?」 此処はシティでも外れであるから、地上の光は空には届かない。 遊星は頷いた。 「サテライトでは、空が澱んでいるから、こんなにはっきりと月は見えない」 「・・・月に、近づいた気がする」 近づいた。 其れは遊星に似合わない詩的な言い方に思われた。 釣られてもう一度氷室も月を見る。 「そんな風に月を見たことはなかったな」 「・・・月までの距離は平均38万km、歩いていくとしたら約11年かかるそうだ」 「それはまた果てしない距離だな」 どのくらいの速度で歩くのか知らないが、途中で力尽きそうだ。 「そうでもない」 遊星は言った。 「2年で此処まできた」 「あと少し・・届かない距離じゃない」 まるで独り言のようなその言葉に、夜空を見上げる遊星が、月を見ているのではないと気が付いた。 何処かで同じ月を見ているはずの、誰かを見ている。 そして、それはおそらく 遊星の良く口にする、『絆』や『仲間』と言うものが二人の間でどれほどの意味を持つのか、氷室は知らない。もちろん詮索するつもりもない。 「いよいよフォーチュンカップが始まるんだ・・さっさと寝ろよ」 それだけ言って、空き地を後にする。 「ああ、わかった」 そう返事をした遊星は、しかし振り返ると未だ夜空を仰いでいた。 END 遊星たんはサテライトに居た時もよく月を見ていたし 同じ月を見てるはずのジャックのことを思ってたはず!と思って。 デュエルで負けたときから、いつかちゃんと勝ちたい相手なのですよ。 恋焦がれてるの(また何か言ってるし・・) 月まで歩いて11年というのはどっかで読んだ月に関するうろ覚えのコネタでしたが 検索かけたらそれであってる模様。
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