■笑ってるなら(ジャ遊)■
ジャ遊+クロウたん
マーサハウス時代。 この頃からジャ遊夫婦はクロたん溺愛というただの妄想(^^ゞ
今日は急患が入ったので、シュミットの手伝いが忙しいらしく、マーサは慌ただしく食事の支度をすると、其方へ戻ってしまった。
残った子供たちだけで皿を配り、テーブルに運ぶ。 今日は唐揚げだ。 シティでは大した事は無いかも知れないが、此処では御馳走ともいえた。 「これ、なんだ?」 クロウが箸で唐揚げを突いて訊く。 初めて見るらしい。 「唐揚げだ」 ジャックが横柄に答えた。 海の見えるジャンク置場の隅っこで一人で暮らしていたクロウを、遊星とジャックはマーサの処へ連れてきた。 懐っこく明るいクロウは、あっという間に此処に馴染み、人気者になった。 連れて来てよかった、と思う。 子供一人では今日の糧さえ儘ならないのがサテライトだ。 この明るさが、心無い大人たちの悪意によって損なわれないうちに、此処へ連れて来れて良かった。 「からあげ?」 クロウが小首を傾げる。 「鶏の唐揚げだ」 遊星は自分の唐揚げを口に運びながら答えた。 「とり・・・・」 「どうした、クロウ」 「・・・ジャックとゆうせいにあげる」 クロウは小さな声でそういうと、白米だけをもそもそと食べ始めた。 炊き立てでも新米でもない御飯は、おかずも無しにただ食べるのは辛そうだ。 かといって他におかずは無い。 「クロウ?」 見ると、大きな目に涙を溜めていた。 こんなクロウを見るのは初めてで、少し焦る。 他の子供たちは食事に夢中で此方の様子に気がつかない。 ジャックは席を立って、台所へ消えた。 何をしに行ったのかと見ていると、すぐに塩を持って戻ってくる。 唐揚げの皿に乗った、僅かばかりの付け合わせのレタスに振った後、さりげなくクロウの方へ塩の瓶を寄こした。 「・・・ありがと」 クロウは礼を言って、ご飯に塩をかけて食べ始める。 其れを見て、ああ、鳥が食べられないのか、とようやく気がついた。 * クロウが寝付いた後、ジャックと並んで座って、小さな声で話をする。 「オレも」 ジャックは言った。 「初めて自分が釣った魚を目の前でさばかれた時は驚いたものだ」 そうだ、自分だってそうだった。 今まで生きていたものが、動かなくなる。 だが、すぐ慣れた。 「此処ではそんな事を言っていては生き残れない」 ジャックの言う通りだ。 だけどクロウは鳥が好きで、鳥が飛んでいるのを見るのが好きで、鳥のように飛んだという伝説の男に憧れて、大空を自由に舞う鳥が好きで。 鳥が、好きで。 だから鳥が食べられないという。 そんな感情、ジャックも遊星も生きていくためにとっくに無くしてしまったのに。 「・・・・明日、マーサにクロウは鳥が食べられないから出さないでくれと言ってみよう」 ジャックが言った。 遊星も神妙に頷く。 「これから唐揚げ食べられなくても、我慢してもいい」 クロウが、笑っているなら。 END ジャ遊夫婦とクロウたん そうして幼いジャ遊夫婦はクロウたんを育てていこうと決めましたが クロウたんはさくさくサテライトに馴染んで マーカーつけられてきたりしてます的な(笑) クロたんが鳥食べられなかったら可愛いな、という ただの妄想でした;
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