■君に逢いに行けます(京クロ)■

3分間で出来ること














 

目を覚ますと予想外に窓の外が明るかった。
慌てて時計を見れば、鳴る筈の時刻はとうに過ぎている。
鳴らなかったのか、それとも無意識に止めてしまったのか。
どちらにせよ急いで梯子を降りる。
「わり、寝過ごした!」
「おはようクロウ」
にこにことブルーノが振り返った。
「目覚ましならなくてよー」
「うん、ボクが止めた」
目玉焼きの乗ったトーストをクロウに差し出しながらブルーノがそう言う。
「なんでだよ!」
クロウは思わず突っ込んだ。
「今日は、クロウにゆっくりして欲しいんだ」
「は?」
「仕事はジャックと遊星で手分けしてやってくれるって。ウチの中のことはボクがやるよ」
「なんで」
「ええと、その」
ブルーノは返答に困ったらしく視線を泳がした。
理由を言うなと遊星あたりに口止めされているのだろう。
この状況には覚えがあった。
そう、母の日だ。
母の日に、双子も巻き込んで、こんな風に、日頃の感謝をこめてオレ達がやるから、と言い渡されたのだ。
オレはお前らのか―ちゃんじゃねえと怒鳴ったことも、悪いがその後の後片付けが大変だったことも、いい思い出だ。
今日って母の日だっけ。
カレンダーを見ても特にそんなことは書いていない。
ええと昨日がゴミの日で5日……今日は6日だから、…。
此処でようやくクロウは今日が何の日であるか思い出した。
自分の、誕生日だ。
成程、多分此方には内緒でサプライズパーティ的なことを計画しているのだろう。
其れなら自分が此処に居るのは準備の邪魔になる。
クロウはトーストを齧りながらしばし考える。
誕生日に仕事がなくて暇。
だったら何をしよう?
有意義に誕生日の時間を過ごすには。
自分が何をしたいのか時計の長針が3つほど進む間考えて、クロウは答えを出した。


そうだ、鬼柳に会いに行こう。

ずっと年をとるのが怖かった。
鬼柳が死んだと聞かされた時から。
ヤツの年を追い越すのが怖かった。
死んだ人間はもう年を取らない。
記憶の中の鬼柳はあの頃のままなのに、自分だけが其れを追い越して行くのが怖かった。
けれど、もうその心配はしなくていい。
ヤツの住む町は遠くて、なかなか会えないけれど。

でも、生きている。

よし、とクロウは立ちあがった。
「ほんじゃありがたく休むことにして、ちょっと散歩行ってくるわ」


アイツに会いに行こう。




誕生日なんだぞって言いに行こう。


 





 




Dホイールを駆って、シティを出たところでふと気が付いた。
夕飯までに帰れるかな。
多分、遊星たちがささやかながら誕生日パーティの準備をしてくれている筈だ。
其れまでには帰らないと不味い。
いっそ鬼柳に連絡入れて呼びだして途中で落ち合おうか。
でもアイツも町長として忙しい身だし。
しまった、どうしようか、とクロウが考えていると、向こうからDホイールが走ってきた。
見たことのあるフォルム。
「鬼柳!」
「クロウ!」
向こうもクロウに気が付いて停車する。
「何でこんなトコいんだよ」
鬼柳は言った。
「ちょっとシティまで散歩」
クロウはすかさず突っ込む。
散歩という距離じゃない。
「嘘つけ。仕事どうしたお前」
「いつも一生懸命働く町長に街の皆がお休みをくれました」
「ホントかよ」
クロウが食い下がると、鬼柳は切り返してきた。
「クロウこそどうしたんだよ」
「散歩」
「仕事は?」
「『いつも一生懸命働くオレに皆が休みをくれました』」
二人で顔を見合わせて同時に吹き出す。
「なあ、デュエルしようぜ」
「お、いいな」
デュエリストたるもの挑まれたら受けなきゃな。
そう言って笑う鬼柳は昔と少しも変わらないように見える。



全然変わらないなんてことはない。
一つ年を取って、自分もコイツも少しは変わった、と思う。


でも根本的なところはやっぱり変わらない。

 




『ところで二人とも、そろそろ戻って来て欲しいんだが』
結局、遊星から通信が入るまで何回もデュエルした。



 




有意義な誕生日の過ごし方だった。

 

 









END



京クロ
クロたんお誕生日おめでとう!
京介は一生懸命仕事終わらせて会いに来ました
ブルーノちゃんが居るのは仕様です

お誕生日は正確には疾風ちゃんこと漫画版クロたんのプロフですけども
まあその辺は気にしなくていいよね!一緒でいいよね!ってことで
クロたん身長174も絶対ナイと思うけどなwww

 

お題は此方から
corona






2013.09.06

 

 

>戻る