寝室のある3階から梯子を下りて行ったら、テーブルの上にカップラーメンが一つ乗っていた。
お湯を沸かす遊星が此方を見て言う。
「おはよう、クロウ」
「おう、おはよ。朝飯、カップラーメンなのか?」
何か作ろうか、と言うと、遊星はいや、とカップラーメンを差して笑った。
「昔みたいに皆で分け合おうと思って」
一つのカップラーメンを分け合って、食べる。
子供の頃は其れがご馳走だった。
皆で食べればそれだけでとても美味しかった。
「でも4人で分けたら少なくね?」
遊星ジャッククロウ、そしてブルーノ。
現在此処に住んでいるのはこの4人だ。
皆もう子供ではないし、カップ麺一つを分け合って足りるとは思えない。
「いや、5人だ。その分夕飯は少し豪勢だぞ」
「5人?」
5人、という人数も気になるが豪勢というのもどういうことか。
さらに質問しようとしたら其処へ階下からブルーノとジャックが上がってきた。
ジャックまで起きているとは珍しい。
「おはようクロウ、おた」
「ブルーノ」
何か言いかけたブルーノは遊星の一言でぱっと自分の両手で口を覆う。
「?何なんだよ一体」
そんな意味ありげな態度をとられたら気になるのが人情ではないか。
遊星が首謀者らしいが、おそらく簡単には口を割らないだろう。
クロウは一番揺さぶりが効くブルーノに問いかける。
「ブルーノ、」
「なんでもないよ!」
「へえ、オレには言えないような話か。ふうん」
詰め寄るとブルーノは後退さった。
涙目である。
「だって遊星が言っちゃ駄目って」
「なんで?」
畳み掛けるとブルーノは言った。
「一番は鬼柳さんに譲ってあげようって」
「鬼柳?つか一番?」
遊星が小さくため息をつき、其処でようやく自分が喋りすぎたことを悟ったようだ。
再びブルーノは口を覆った。
禁止されていたのに言ってしまった、と本格的に小動物と化したブルーノよりも、クロウには確認したい重要事項がことがある。
「鬼柳の奴、来るのか?」
「もう言えないよぉ」
ブルーノが半べそで声を上げたところで、表にDホイールの止まる音がした。
「クロウ!」
遠慮もなく駆けあがってきた鬼柳が言う。
「誕生日おめでとう!!」
「お、おお」
その剣幕に押されて返事をする。
遊星が少し笑った。
「誕生日おめでとう、クロウ」
ジャックもそれに続く。
「もう言っていいんだね?おめでとう、クロウ」
ブルーノが嬉しそうに言った。
成程、一番に鬼柳に祝わせよう、ということだったらしい。
「鬼柳が戻ってきて初めてのクロウの誕生日だからな」
「…あんがとな、遊星」
遊星はにこりと笑った。
「ちょうどカップ麺も出来たぞ」
何時の間に湯を入れたのか、いいタイミングだ。
そう言えば昔、カップ麺の話をしたときに鬼柳がオレも皆で分け合って食べたいと良く分からない駄々を捏ねたことがあったっけ。
其れを覚えていてのこの朝食らしい。
さすが遊星。
呟くと遊星は小さく笑った。
END
京クロ+遊星たん
クロたんお誕生日おめでとう!
ブルーノちゃんは隠し事苦手でつい喋っちゃうカンジ
お題は此方から
corona