■風邪キス(京クロ)■
京クロ
風邪っぴきクロウたん。
ちーん、と大きな音をたてて、クロウはハナをかんだ。
そのゴミを、ベッドの上から部屋の隅にごみ箱代わりに置いてある缶の方へぽい、と投げる。 遊星が機械を拭くための業務用アルコールかなんかが入っていた四角い大きな缶だ。 綺麗に弧を描いてゴミは缶の中へと落ちた。 「おー、ナイスシュート」 部屋の入口で見ていた京介がそう賞賛した。 手に水の入ったコップを持っている。 「風邪薬飲んどけよ、クロウ」 言いながらベッドのところまでやってきた京介は、テーブル代わりの木の箱にコップを置くとポケットから薬の包みを出して振って見せた。 「要らね。ハナが出るだけだし」 ずず、と鼻を啜って、クロウは言った。 「可愛いハナが真っ赤だぞ」 確かにかみ過ぎでハナがひりひりする。 でも薬に頼るのもあんまり好きじゃない。 苦いし。 むう、と口を尖らせるクロウに、さらに京介が言う。 「まあ赤いハナのクロウもキスしたくなるくらい可愛いけどなv」 「飲めばいいんだろ」 本当にキスをしそうな勢いだったので慌ててクロウは京介の手から薬を奪い取った。 コップの水を飲み干して言う。 「・・マズ」 「良薬は口に苦し、って言うんだよ。何だったら口直しにキスでもするか?」 「てめーはそればっかだな、馬鹿!」 唇を突き出してみせる京介に、クロウはトイレットペーパーをぶつけてやった。 馬鹿ってひでえよ、だってクロウが可愛いからいけないんじゃん、とわけのわからない理屈で京介は騒ぐ。 せっかく薬持ってきてくれた礼を言おうと思ったのに、本当に馬鹿だ。 ぶつかって転がったトイレットペーパーを巻きながら京介が言った。 「それにしてもごみ箱いっぱいじゃん。・・ってトイレットペーパーでハナかんでるのかクロウ?!そりゃハナも赤くなるわ」 「だってティッシュより安いし」 「クロウ・・」 京介はがば、とクロウに抱きつくと、芝居がかった口調で言った。 「オレがいつかお金持ちになってクロウに柔らかいティッシュを好きなだけ使わせてやるからな!」 柔らかいティッシュとは保湿ティッシュとかそういった類のものを指しているらしい。 高級ティッシュは確かにサテライトではお目にかかることもないが。 「何かもうその発想自体がものすごく貧乏くさいんだが」 思わずクロウは遠い眼をした。 ハイジに白いパンを食べさせてあげる!と言われたような気分だ。 「そうかな」 「そうだろ」 「でもオレは金持ちになったって浮気なんかしないぜ。クロウ一筋」 「あーはいはい」 そんな話はしてねぇよ、と突っ込むのも面倒でクロウは適当に聞き流すことにした。 「それより風邪移るからもうあっち行けよお前」 しっしっと追い払う仕草をすると、京介がふいに真面目な顔になった。 いつもの軽さが鳴りを潜めると、なんだかこちらが悪い事をしたような気分になるから嫌だ。 何だよ、とクロウが言う前に京介は唇を近づけてきた。 「・・・・・・っ!!!!」 クロウは京介を思いっきり突き飛ばした。 「この馬鹿っ!」 風邪が移るとか、口にキスするな、とかそういうことの前に。 「ハナが詰まってるんだよ、オレは!!!」 息が出来ないだろうが!死ぬわ! 顔を真っ赤にして怒鳴るクロウに、京介はへらりと笑って言った。 「オレ、クロウとなら死んでもいいかな」 腹上死とか、などと口調は冗談めかしてはいるが、目の色はそれを裏切っている。 お前が死ぬって言ったってオレはお断りだ。 力づくでも引きずり戻してやる。 そんな簡単に死ぬだなんて、冗談でも言うな。この馬鹿! 馬鹿相手にそう怒鳴るのも悔しいので、とにかくもてる限り渾身の力を込めてクロウは思いっきり京介を殴ってやった。 END 京クロ 風邪ひいて鼻詰まって阿呆みたいに口開けて クロウたんがこうやって口開けてたら 京介がべろちゅうしにくるな・・とか考えてました(笑) 普段は馬鹿とか邪険に扱っても 京介が「死」という言葉を口にしたときに 「じゃあ死ね」とか言わない子だったらイイナ・・ とちょっと思った。
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