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■名前で呼んで（京クロ）■
満足京クロ
京介って呼んで
昼飯が済むと、ジャックも遊星も出掛けてしまった。
今日の夕食の当番はジャックだから、それまでには帰ってくるだろう。 ジャックは時間に五月蠅いのだ。 鬼柳は暇そうに共用の部屋でテレビを見ている。 クロウは自分のを入れるついでに鬼柳にも茶を入れてやった。 「お、サンキュー、クロウ」 鬼柳は礼を言ってマグカップを受け取ると口を付けた。 クロウは行儀悪く立ったまま、鬼柳の後ろからテレビを覗き込む。 芸能ニュースらしかった。 何とやらという芸能人が、何とかという芸能人と結婚したらしい。 結婚会見とやらが流れていた。 『彼女のことを何て呼んでいるんですか？』 レポーターの問いに答えて、何とかという男は言った。 『オレはこう見えて結構亭主関白なんで・・アカネ、とか、アカネたんとか』 鬼柳が画面を見ながら言う。 「アカネたんって亭主関白かぁ？」 「違うんじゃねぇの」 クロウは茶を啜りながら、そう返事をした。 結婚会見はまだ続いていたが、鬼柳はテレビを消す。 他人の結婚など興味はないが、話題にはしたいらしい。 「でもオレも結婚したら『クロウたん』だな」 「何だその結婚したら、ってのは」 つか誰と結婚する気なんだお前。 ありえないから、その仮定。 クロウの突っ込みを無視して、鬼柳はレポーターの口調を真似て言った。 「彼を何て呼んでいるんですか？」 クロウはもちろん即答する。 「鬼柳」 「なんでだよぉ！！」 ぎゃあ！と鬼柳が騒いだ。 五月蠅い。 「何で苗字なんだよ、其処は『京たん』とか『京介たん』とか呼んでくれるところだろ？！」 「何でそんな阿呆みたいな呼び方しなきゃならないんだ」 鬼柳は真面目な顔で即答した。 「新婚だから」 「いやまず其処がネェだろ」 鬼柳は、普段はかなり頼れる、頭のキレるリーダーなのだ。 クロウも信頼している。 しかし時々超阿呆だ、と思う。 わけわからん。 五月蠅いし面倒くさい。 クロウはマグカップをテーブルに置いて、そろそろ戦線離脱しなければ、と退路を模索する。 鬼柳の言葉は続く。 「つかオレは前から思っていたんだよ。何でお前らオレのこと苗字で呼ぶわけ？何でそんな他人行儀なの？そろそろ名前で呼んでくれてもいいと思うんだけど？」 「鬼柳でいいじゃねーか別に」 「よくねえ！」 鬼柳は勢いよくマグカップをテーブルに置いた。 「百歩譲って、遊星やジャックは『鬼柳』でも許すけど、クロウには『京介』って呼んで欲しい」 「何でオレだけ」 「好きだから」 当たり前のようにさらっと鬼柳は言った。 「クロウはオレの『特別』だから」 クロウはうぅ、と唸った。 どうしてこいつはこう恥ずかしい台詞を時々臆面もなく発するのか。 こっちの方が恥ずかしくなる。 鬼柳はさらに言った。 「さっきの結婚会見じゃねーけど、やっぱ好きな人には名前で呼んで欲しいし。何だったらオレもクロウのことこれからはずっと『クロウたん』って呼ぶぜ」 「ふざけんな」 とりあえず脳天に一撃かまして、クロウは遁走した。 子供たちの相手をして、夕方戻って見ると、鬼柳は出て行った時のままテレビの前に居た。 寝てる。 もう風も冷たいし、こんな所で転寝していては風邪をひく。 「おい、鬼柳、起きろ。こんなとこで寝るなって」 肩を揺さぶってみるが、目を覚ます気配はない。 鬼柳。 クロウも本当は少し思っていた。 もうチームを組んでずいぶん立つし、そろそろ名前で呼んでもいいんじゃないかと。 だけど遊星もジャックも苗字で呼んでいるのに、自分だけが『京介』と呼ぶなんて。 それこそ鬼柳のことを『特別』に思ってるみたいじゃないか。 考えただけで恥ずかしい。 絶対に京介なんて呼んでやるものか。 しかし、他人行儀で寂しいと、鬼柳が本当に思っているのなら、意地を張って呼んでやらないのも、どうか。 鬼柳は起きる気配がない。 「・・き・・・きょ・・うすけ」 かあ、と血が上った。 ちょっと試しに口にしただけで、顔が赤くなってるのが自分でわかるほど恥ずかしいのに、とてもとても毎日名前で呼ぶことなんて出来そうもない。 「うわあ・・無理！」 クロウが頬を手で押さえてそう呻いたところで、いきなり鬼柳ががばり、と身を起こした。 クロウは叫ぶ。 「タヌキかよ！」 「いや、今起きたトコ！だからもう一回！！」 「起きてたんじゃねぇか！！」 追い縋る鬼柳を張り飛ばして、クロウは再び逃走した。 それを素早く復活した鬼柳が追いかける。 結果、夕飯の時間に間に合わず、二人してジャックに小言を食らう羽目になった。 どうにも理不尽だ、とクロウは思った。 ＥＮＤ 満足京クロ 呼ばないけど本当は特別には思ってるよ、的な（＾−＾） 京介って呼ぶのは夜ベッドの上でアレな時だけでいいじゃん、みたいな（えー） げきだんひとりとおーさわあかねの結婚会見をみて書きました☆
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