■抱きつく(京クロ)■

京クロ・満足







クロウが子供たちのおやつ用に作ったポップコーンを分けてくれたので、一緒に食べていたら、京介が帰ってきた。
「お、何食ってんだ?いい匂い」
「ぎゃあ!」
後ろから突然抱きつかれて驚いたクロウが悲鳴を上げる。
「ポップコーンだ」
クロウの代わりに向かいに居た遊星が答えた。
「抱きつくな!離れろ!!」
クロウは京介を引きはがそうとするが、しっかり抱き込まれて上手くいかなかった。
「オレにもくれ」
そう言って京介はあーん、と口を開ける。
「自分で食え、自分で!」
「今手が塞がってるんだよ」
そういう京介の手はクロウにがっちりと巻きついている。
アレを手が塞がっていると言うのだろうか。
違うんじゃないか、と遊星は首を傾げる。
「離れろって言ってんだろうが!」
クロウは再び京介を自分から引っぺがそうとしたが、徒労に終わった。
しつこく京介はあーんと口を開ける。
「お前は人の指まで食おうとするから嫌だ!」
「えーちょっと舐めてるだけじゃん」
「舐めるな!!」
クロウがキィと叫ぶ。
しかし京介が離れる気配はない。
「さっさと離さないとお前の口に乾燥とうもろこしと油と火のついたマッチ放り込むぞ!」
ポップコーンの材料だ。
口の中で簡単にポップコーンが出来そうである。
遊星はその様子を想像して言った。
「人間ポップコーン製造機だな。きっと子供たちも喜ぶ」
ポップコーンは材料が手に入った時だけ作るおやつだが、子供たちに評判がいい。
フライパンに伏せた蓋を動かすほど、ぽんぽんとポップコーンが跳ねる音が楽しいらしい。
それを京介がやってくれるのなら、もっと子供は喜ぶだろう。
「いや、それオレ多分死ぬから!お前が真面目な顔で言うとマジっぽくてホントこえーよ!遊星!」
京介が叫んだ。
クロウが冷たく言う。
「じゃあ離せ」
「あーん」
性懲りもなく京介は口を開けた。
「てめえ、今までの話の流れでまだそれか!?」
肩越しに京介の頭を殴るクロウを見ながら、思わず呟く。
「仲がいいな」
「此れのどこがそう見えるんだ!」
クロウは子犬のようにキャンキャン騒ぐ。
残念ながらやっぱりその図はじゃれてるようにしか見えなかった。






「お、クロウが鳥に集られてる」
調子が悪いデュエルディスクを直していると、窓際で下を見ながら京介が言った。
遊星も立ち上がって、窓の所まで行く。
クロウは庭に居た。
時々餌をやっているせいか、鳥が集まって来ている。
その様子を眺める京介は楽しそうだ。
デュエルディスクの修理に戻ろうとした遊星は目の端に影を捉えた。
何処かで見た男。
京介も気が付いたらしい。
「あいつ、この間の・・!」
クロウの背後に潜むその男は先日潰したチームの奴だった。
2階からは丸見えだが、クロウは鳥に夢中でまだ気が付いていない。
「おい、クロウ・・!!」
「クロウ!」
二人の叫びにクロウが2階を見上げる。
と、男が後ろからクロウに飛びかかった。
一瞬、助太刀するために京介が窓から飛び降りるのではないかと思った。
だが、その必要はなかった。
クロウは振り返りもせず、肘を腹に食らわせ、続いて顔面に裏拳、振り向きざま足に蹴りを入れ、たまらずよろけた相手の脳天に踵落としを決めた。
重さはないが、スピードがある踵落としは大ダメージにつながったようだ。
ほんの数秒で、クロウの何倍も大きな男は、地面に沈んでいた。
京介が感心したように口笛を吹く。
「すげーな」
「そうだな」
遊星も相槌を打つ。
小柄ではあるが、別に喧嘩だって弱いわけではないのだ。
むしろ小柄である故に、弱かったら生き残れないだろう。
「オレもクロウに抱きつくときは気をつけないとな。あの踵はまともに食らったらきっついわ」


そんな心配、必要ない。



そう言ってやろうかと思ったが、そんなこと微塵も思っていなさそうな口調に、遊星は其れを止めた。





END





満足京クロ
クロウたんは自覚なしだが
京介はそれなりに愛されてる自覚あり、みたいな(^−^)


2009.04.05

 

 

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