■猫が居なくなった(京クロ)■

京クロ
遊星たんとクロウたん
あの後で暗い












ダークシグナーとの戦いが終わり、地縛神の生贄に使われたサテライトの人々も、無事戻ってきた。
クロウの大切な子供たちも。
人々は以前と変わらぬ生活に戻って行った。


久しぶりにアジトを尋ねると、クロウは何か作っているところだった。
棒に紐を括り付けて、その先に羽のようなものを結び付けている。
玩具の釣り竿のようだ。
「何を作っているんだ?」
遊星は聞いた。
「猫のおもちゃだよ」
クロウはそう言ってその玩具を振ってみせる。
タイミングよく、にゃーと猫の鳴き声がした。
クロウの膝に寄ってきた猫は、すりすりと顔を擦りつける。
「また逃げて来たのか」
クロウはそう言って猫を撫でてやった。
気持ち良さそうに猫は喉を鳴らす。
「子供は遠慮がねえからなぁ。めちゃくちゃ触られるし尻尾引っ張られたりするからすぐ逃げてくるんだ」
毛並みを整えてやりながらクロウは言った。
座るクロウにぴったり寄り添うようにして猫は丸くなる。
猫は、気ままな生き物だという。
けれど此方が落ち込んでいたりすると、気遣っているかのように側に寄ってきたりする。
今、クロウに寄り添う猫は、丁度そんな感じに見えた。
白い毛の、金の目を持つ猫。
「飼っているのか」
遊星が聞くとクロウは首を振った。
「いや、餌をやったら居付いちまっただけ」
「大分慣れているな」
「そうだな、飼い猫だったのかもしれないな」
「名前は?」
遊星の問いに再びクロウは首を振った。
「付けてねぇ。おい、とか。お前、とか。猫、とか」
適当に呼んでる、とクロウは言う。
「だって野良猫だしさ」



「またすぐ居なくなっちまうかもしれねえじゃねーか」


居なくなったら、寂しいから。




「あ、あと飯だぞ、っつーとぶっ飛んでくるぜ」
そう言ってクロウは笑った。
釣られて遊星も笑ってみせる。





その金の瞳に誰を重ねて見ているのか。
そんなことはわかっていたが、気がつかぬ振りをした。






END








京クロ
こういうときほど明るい話を描こうと思ったんだけど無理だった。
薄ら暗い話ですいません。

最後クロウたんとも会話が欲しかったなぁ・・・


2009.04.26

 

 

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