■甘やかす(京クロ)■
満足京クロ
ちょっと甘やかしてみたい。
鬼柳京介という男は、頭の回転が速く、デュエルも強い、頼れるリーダーだ。
ジャックや遊星も奴には一目置いていて、その命令にはきちんと従う。 正直、カッコいいとか少し思ってる。 だが、普段の生活もいつも『リーダー』であるかというと、実はそうでもない。 「崖からオレと遊星とジャックが落ちそうになってたら誰を助ける?」 唐突に鬼柳が言った。 ああ、なんだっけ。 心理テストか何かでそんなん聞いたことがある気がするな。 昔拾った漫画の中のナントカ試験でそんな問題が出てきたことしか思い出せないけど。 「遊星」 「何でだよぉ!」 そんなことを考えながら返答すると、鬼柳は不満そうに喚いた。 まあそう言うと思ったけどな。 「其処はオレって言ってくれるべきトコロじゃねーの」 「馬鹿かお前」 テーブルに貼りついて恨めしげに立ってる俺を見上げてくる鬼柳をばっさり切って捨てる。 「お前らん中じゃ遊星が一番軽いじゃねーか。ジャックなんかあんな馬鹿みてーにでけえのにどー考えたってオレ一人で助けられるわきゃねーだろ。だったら一番可能性が高いとこから確実に行く方が全員助けられる率は上がるだろうが」 「まーそうだけどさー」 オレの現実的な理論に、面白くなさそうに鬼柳は口を尖らせる。 「・・・じゃー次は?」 「ジャック」 「オレびりかよ!ひでえ!!」 遊星と二人でジャックを助ける。 即答が気に入らなかったようで、鬼柳の声は一段と大きくなった。 「その間にオレ、落ちて死んじまう!」 「馬鹿かお前」 さっきも言ったような言葉をもう一度テーブルに潰れる鬼柳の頭の上から落としてやる。 「そんぐらいで落ちちまうようなお前じゃねーだろ、リーダー。根性見せろよ」 リーダー、と呼ばれて鬼柳はうう、と唸った。 テーブルの上に顎を乗せて、あっちを向いたまま小さな声で言う。 「でもクロウに後回しにされたら、オレきっとショックで頑張れねえよ」 拗ねんなよ、子供じゃあるまいし。 子供なら可愛いけど、お前じゃ少しも可愛くない。 もうちょっと可愛かったらいいのに。 意地悪くオレは言った。 「じゃあ遊星を助ける前にお前の処へ行って『お前は自力で上がれ』って言ってやる」 「えーつめてえええー!助けてくんねーのー!?」 鬼柳は椅子をがたがたさせてブーイングする。 本気でいじけそうだ。 いじけた鬼柳は普段にも増して面倒くさい。 オレはもう一度、じゃあ、と付け加えた。 「『自力で登ってきたらご褒美にちゅうしてやる』って言う」 「マジで!」 鬼柳はがたん、と大きな音を立てて椅子から立ち上がった。 思わず一歩下がる。 食い付きが良すぎるぞお前。 『ご褒美』を鼻先にぶら下げただけで全然態度が違う。 本当に子供とレベルかわんねーな。 「じゃあオレ頑張る!」 「あっそ」 この話はこれでオシマイだろうと聞き流したオレを鬼柳が抱き込んだ。 「つか、今!今して!」 「今の話じゃねーだろうがあ!」 迫ってきた鬼柳の顔面にグーで思いっきり拳を叩きこんでやる。 まったく甘やかすとすぐ調子に乗るから面倒くさい。 鬼柳京介という男は、頭の回転が速く、デュエルも強い、頼れるリーダーだ。 だが、普段の生活もいつも『リーダー』であるかというと、実はそうでもない。 大人気なく拗ねたりいじけたり、まるで子供みたいだ、と思う。 こいつがリーダーじゃなくて、オレより年下だったら、もっと大っぴらに甘やかしてやるのに、なんて、ちょっと思ってることは絶対に内緒だ。 END
京クロ 手書きブログで描いてたネタを 文章にしてみました。 手ぶろよりもクロウたんがデレている(笑) この「崖から〜」とかいう質問 心理テストじゃなかったかなぁ・・?とは思うものの はんたー²のハンター試験で出てきたアレしか思い出せん; レオ兄が好き! あの寂しがり屋の阿呆を もっと甘やかしてあげればよかったんだよ・・と思う。 リーダーとしては結構優秀だったから 放っといて大丈夫と皆思ったんだろうなぁ・・
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