■早く帰ってこい(京クロ)■
京クロ
京介が旅に出るとか言い出したので
「旅に出ようと思うんだ」
唐突に鬼柳が言った。 「は?たび?」 思わず間抜けな声で問い返してしまう。 鬼柳は頷いた。 「自分が如何に井の中の蛙だったのか気がついたからさ、サテライト以外の場所を見て回りたいんだ」 なんだそりゃ。 ようやくいろんなことが終わって落ち着いたばっかりだって言うのに何言い出してんだか。 だからこいつは嫌なんだ。 でも、サテライトで満足するしかない、と言っていた鬼柳が、本当は一番もっと広い世界を望んでいたのかもしれない。 その気持ちはわからないでもない。 「行ってくりゃいいだろ」 「サンキュー」 別にオレにお伺い立てなくたって、勝手に行けばいい。 本当はもう何処へも行かないで、ずっとそばに居て欲しい、けど。 そんなこともちろん言えるはずもなく、心の中で鬼柳の馬鹿野郎と呪詛を吐く。 ばーかばーか、馬鹿鬼柳。 死んだと思ったら戻って来て、また消えて、戻って来て。 戻ってきたと思ったら旅に出ます、なんて。 人の気も知らないで。 ホントムカつくこの馬鹿野郎。 馬鹿、ばーか。 たったと手際よく旅の準備を整えた鬼柳が、Dホイールに跨る寸前、くるりと向きを変えて戻ってきた。 なんだ忘れもんでもしたんか。 そう聞く前にぎゅうと抱きしめられた。 「オレ、絶対クロウに見合うような器の大きな男になって戻ってくるからな!」 「・・・何言ってんだ馬鹿」 見合うとか見合わないとか、そんなこと、どうだっていいのに。 オレは、ただ。 「そんで」 鬼柳は続けた。 「帰ってきたら、もう絶対何処も行かない。クロウがヤだっつーてもずっと一緒に居るから」 ――――だからこいつは嫌なんだ。 馬鹿で勝手なくせにこうやって欲しい時に欲しい言葉をくれるから。 ホント、ムカつく。 「・・・早く帰って来い、馬鹿」 いってらっしゃい、と言ってやる気にならなくて、そう言ったら、鬼柳は嬉しそうに笑った。 ホントムカつく、この馬鹿鬼柳。 END 京クロ 京介が旅に出るとか言い出したので クロウたんがバカバカ言う話でした(笑) 早く帰ってきてよね!
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