■もちろん言わない(京クロ)■
満足時代・京クロ前提で遊星たんとクロウたん
デュエルディスクの調整を終えて、遊星は一息ついた。
夢中になっている時は気がつかなかったが、喉が渇いている。 遊星は何か飲もうと狭いキッチンに移動した。 台所の一番奥に鎮座している冷蔵庫は、遊星が修理して使えるようにしたものだ。 大きくはないが、重宝している。 冷蔵庫を覗くと冷えているのは瓶の炭酸水、一本のみだった。 珈琲を入れても良かったが、冷えたものが飲みたくて其れを頂くことにする。 口を付けたところでクロウが帰ってきた。 「あっちー・・おー遊星此処に居たんか」 「おかえり」 クロウは買い出しに行っていたらしい。 大きな袋をどっかりとテーブルに置いて、冷蔵庫を開ける。 「外、超あっちぃわ」 言いながらクロウは買ってきたものをどかどかと冷蔵庫に詰め込み始めた。 適当なように見えて、それなりにきちんと法則を持って詰めていってるらしいのだが、本人以外にはわかりにくい。 ジャックなどはよく文句を言っていた。 幼馴染の変わらぬ行動に遊星は少し笑った。 「あれ、冷えてるのもうなかったっけか」 詰め込みながらクロウが首を傾げる。 遊星は自分の持っていた瓶をちょっと掲げてみせた。 「すまない、最後の一瓶だった」 「わり、一口くれ」 冷蔵庫を閉めて、クロウが手を出す。 遊星は水滴の付いた瓶をクロウに手渡してやった。 美味しそうにそれを飲んで、クロウは遊星に其れを返す。 「もっと飲んでいいぞ」 「いんや、もういいって」 夕飯当番のクロウはそう言ってさっさと米を研ぎ始めた。 今日の献立は何だろう。 そんな事を思いながら炭酸水を口に運ぶ。 何口か飲んだ所で、米を鍋に入れたクロウが、此方を見ているのに気がついた。 「どうした?」 「んや・・遊星なら別にいいのにな、と思って」 何の話かわからずに聞き返すと、クロウは言った。 「鬼柳だとなんか・・やだっつーか」 同じ瓶に口を付けることを言っているらしい。 マーサの所で同じ皿から飯を食った仲なのだし、そんなことは今更だ。 スプーンだって箸だって数が足りなかったから皆で使いまわした。 ジャックだって文句は言うが、特に気にしないで使うだろう。 「鬼柳だと回し飲みが嫌なのか?」 一応、聞いてみる。 クロウは言い難そうにもにょもにょ答えた。 「んー・・まあ男同士だし、気にすることねえんだろうけど、あいつすぐ『口移し〜』とか阿呆なこと言うからなーウザイっつか」 「そうか」 「あんま言うなよ、あいつうっせえから」 「もちろん」 遊星はそう答えた。 鬼柳は自分たち幼馴染3人に対して、ごくたまに何処か僻んだ態度を取るときがある。 自分だけが後から来た余所者のような気がするのだろう。 鬼柳相手にだけ、クロウが回し飲みを嫌がってると知ったらまた拗ねるだろう。 「なんで鬼柳だとヤなんだろうな」 独り言のようなクロウの呟きに、遊星はもう答えなかった。 残っていた炭酸水を飲み干して空き瓶をごみ箱へと投げる。 それはお前が鬼柳を意識しているから、だろう。 もちろん遊星は其れを言わない。 END 満足京クロで遊星たんとクロウたん 遊星たんはクロウたんが 京介が好きって自覚があれば応援してくれるけど 気が付いてないなら言わない、みたいなカンジ。 可愛い幼馴染、できたら盗られたくない。 ご飯は炊飯器がないので鍋で炊きます。
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