■風鈴(京クロ)■
京クロっつか満足。
残暑見舞いっぽいもの・・を目指したつもりだけど・・;
「あっちーよー」
「てめえは他に言うことないのかよ」 クロウが、五月蠅い京介の椅子の足を、がん、と蹴っ飛ばした。 京介がひでえ!と騒ぐ。 相手をするだけで暑苦しいので、ジャックは其れをスルーした。 「だってあっちーんだもんよ。クロウ、氷くれー」 「てめえがガンガン使うからまだ出来てねぇよ。ほらこれで我慢しろ」 何のかんの言っても、世話焼き体質なようで、クロウは濡れたタオルを京介の頭に乗っけてやっている。 少しは涼しくなったのか、しばらくの間静かになって、ジャックはやれやれと息を吐いた。 ふと壁にかかっていた薄汚れたカレンダーが目に留まる。 ジャックは立ち上がって其れを確認すると言った。 「喜べ鬼柳、もう秋だ」 立秋だった。 つまり、夏は終わったということ。 「あき〜?」 顔を上げた京介はジャックがカレンダーの前に居るのを見ると、再びテーブルに突っ伏してしまった。 「そんなん『暦の上では』とかいう奴だろー生憎オレは暦の上でには住んでねーんだよーサテライトの住人なの!」 「そんなん皆一緒だろうが」 クロウが言った。 言いながらクロウは転がっていた子供の砂遊び用の小さなプラスチックのバケツを持って台所へ向かった。 何をするのかと思ったら、其処に水を入れている。 すぐ生暖かくなってしまうタオルを濡らすためらしい。 更に冷凍庫を開けて、バケツに霜を入れた。 相当古い型の冷蔵庫なので冷凍庫の中は霜だらけだ。 それをがりがり削って投入している。 「其れを使う気か」 ジャックは言った。 「だって氷出来ねぇし。食べるわけじゃねーからいいじゃん。使うの鬼柳だし」 「タオルが臭くなるぞ」 「したら鬼柳に洗濯させる」 「えー」 テーブルの上から京介が抗議の声を上げた。 「えー、じゃねえよ馬鹿」 クロウはその頭にバケツの水で濡らし直したタオルをべしゃり、と落としてやる。 落とされたタオルをちょうど良い位置に直しながら京介が顔を上げた。 カレンダーを見ながら言う。 「立秋かあ。立秋過ぎると夜虫が鳴き出すんだよなぁ。コオロギとかそんなんが」 「あーそういやそうだなー夜うっせーわー」 クロウが同意すると、京介は言った。 「あいつらきっとカレンダー持ってるんだぜ」 「馬鹿かおめえは」 クロウはばさりと切って捨てた。 ジャックは大仰に溜息を吐く。 「たまに本当にリーダーがお前で大丈夫なのかと思う時があるぞ」 「ひでえ!」 ぎゃあぎゃあ騒いでいる処へ、買い出しに行っていた遊星が帰宅した。 「何を騒いでいるんだ」 「「次のリーダーについて」」 ジャックとクロウの声がハモる。 さすが幼馴染、妙なところで息が合う。 「ゆうせい〜」 ジャックとクロたんが虐める!と京介は泣き真似をしてみせた。 其れをさらりと流して遊星は言う。 「ほら、いいものを買って来たぞ」 遊星の抱えた買い物袋から出てきたのは、風鈴だった。 さっそく窓辺にぶら下げてみる。 風を受けて、風鈴がちりん、と涼しげな音を立てた。 「お、いいな。どうしたんだ此れ」 クロウが楽しげに言う。 「シティの風鈴市の残りが流れてきたらしい。安かったので買ってきた」 遊星は京介を振り返る。 「少しは涼しい気がするだろう?」 「そだな」 京介は嬉しそうだ。 「風流だな」 ジャックはそう評した。 クロウは身軽に立ち上がると、台所に向かった。 「買い出し御苦労さん。あっちーのにわりかったな遊星。何か飲むだろ?ってか麦茶しかねえけど」 しかも馬鹿リーダーが氷使っちまうからまだ出来てねぇけど、とクロウは付け加えた。 「かまわない、貰おうか」 「オレもー!」 「うっせーよ、てめえには聞いてねぇ。ジャックも飲むだろ?」 「ああ」 「ひでえ!クロたん冷てえ!」 「クロたん言うな、きもい」 クロウの辛らつな台詞にも京介はめげない。 嬉しそうににこにことしている。 ジャックは其れを一瞥して言った。 「にやにやするな。気持ちの悪い」 「だってオレ愛されてるなぁと思ってさ。遊星だってオレの為に風鈴買って来てくれたんだろ?」 「ああ、まあな」 暑い暑いと五月蠅いからだろう。 「クロたんのその冷たさも愛の裏返しなんだよな!ホントは照れてるだけなんだよな!」 「クロたん言うなっつーてるだろ。つかその発想は何処からくんだよ」 麦茶を全員に配って、空になった盆を抱えたクロウがもう一度きめえ!と言った。 「また〜照れなくていいんだぜクロウ。さあオレの腕の中に飛び込んでおいで」 「抱き付くな、うぜええ!!」 暑いと騒ぐわりには、こうやってくっ付くのは平気らしい。 遊星は我関せずとばかりに麦茶を飲んでいる。 ジャックも其れに倣いながらほんの少しイラついていた。 先ほど自分で風流と評した風鈴の音さえ、暑苦しいように感じた。 END 京クロというか満足 お父さんイライラ(笑) 京介がただの弄られキャラっす(笑) でも愛されてるのよ!(たぶん) 満足の台所は対面キッチンみたいなのを脳内設定してるので テーブル側に居ても会話ができるのです。 フリー小説でした(終了しました)
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