■大福(京クロ)■

京クロ
幼馴染組と青野さん
京クロ前提で青→黒?








Dホイールの聞きなれたエンジン音が響いて、ブラックバードが戻ってきた。
その音にパソコンに向かっていたブルーノは顔を上げる。
仕事に出ていたクロウだ。
ごく偶に、こうやって仕事の合間に帰って来ることがある。
まだ沢山配達の仕事が残っていて、時間がかかると思われる時が多い。
残りの仕事を片付ける活力を得るための休憩らしい。
大抵そういう時は何か甘いものを買って帰って来る。
メットを取ったクロウが、近所のスーパーで買ってきたらしい5個入りパックの大福を手に言った。
「休憩にしようぜ〜」
その声にテスト機の調整をしていた遊星が立ち上がって、茶の用意を始める。
棚から取り出され、並べられたカップは5つ。
5つ?
4つでいいはずだし、遊星がそんな間違いをするとは思えない。
何か理由があるのだろうか。
それを問いただす前に、ポットのお湯が残り少ないのを思い出したので、ブルーノはまずはやかんを火にかけた。
クロウはお茶はあまり好きではないらしいが、『大福にはお茶だろう』と遊星が言うので大人しく従っている。
「おーい、ジャックお茶にしようぜ」
2人が茶の用意をしているその間にクロウはジャックを呼びに行った。


「いただきまーす」
クロウが幸せそうな顔をして大福に齧りつく。
大福が好きらしい。
だから、5つ入りの大福の、余った一個は当然クロウが食べるのだろうと思っていた。
置いておいても硬くなってしまう。
が、その一個は小さい皿に移されて、5つ目のお茶と一緒に誰も居ない席に置かれている。
ジャックも遊星もそれが当然のような顔をしているが、何故そうしているのか分からない。
あれは誰の分なのか。
ブルーノは聞いてみた。
「それ、誰の分なんだい?」
「鬼柳の」
もごもごと口を動かしながら、簡潔にクロウは答える。
「鬼柳?」
遊星たちの話の端々に時折出てくるので、その人物の名前は聞いたことがある。
だが、旅に出て、今は居ないはずだ。
口の中の大福を飲み込んでクロウが言う。
「うん、うちの馬鹿リーダー。あいつ除けもんにすっと拗ねっからな。ま、結局オレが食うんだけど」
けらけら笑うとクロウは最後の一個に手を伸ばした。
「じゃ、ごっそーさん」
口にそれを押し込んで、再びメットを被るとクロウは飛び出して行った。
静かになった部屋で遊星が言う。
「鬼柳にも分けてやりたいんだろう」
これは、鬼柳の分。
そういって余分に買ってくる。
この家で家計を賄っているのはクロウだし、節約しなければいけないと一番思っているのもクロウだろう。
けれど、一つ多く買ってくる。
だから遊星も鬼柳のためにお茶を入れてやる。


鬼柳のため、というよりも、クロウのために。



「何時帰ってきてもいいようにしておきたい気持ちもあるだろうしな」
安くて渋いお茶に不平を洩らしながら、ジャックもそう言った。
「そっか、可愛いね」
ブルーノは素直な感想を述べた。
自分の好きなものを、自分の好きな人のために、買ってくる。
可愛い所あるなぁ、と思う。
ブルーノの言葉にジャックと遊星は顔を見合わせた。
「・・・ブルーノ、一応言っておくがクロウは駄目だぞ」
「は?何の話だい?」
ブルーノは小首を傾げた。
何故2人にそんな目で見られるのかまったくわからない。
「可愛いけど」
んー、と少し考えてブルーノは言葉を続けた。


「でも何か、供え物みたいだね」


仏壇とか遺影に供えるヤツ。

そう言うと、遊星に洒落にならないからクロウには絶対に言わないでくれ、と懇願された。







END





京クロ前提で青→黒?
一回死んだオトコなので供え物っつーのは本気でシャレにならん(^^ゞ
自分の大好きな大福を「鬼柳の分」ってとっておくクロたんが
可愛いかな〜、と思ったんですが
なんか違うものになった気も;

青野さんは天然で、油断すると意外に危険人物、という認識。
受攻どっちでも行けるぜ(おい)


2009.11.15

 

 

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