■もう言わない(京クロ)■

京クロ
京介は反省して戻ってきました、という妄想。









汗で額に張り付いた髪をかき上げてやる。
灰青の瞳が気だるげに此方を見た。
「シャワー浴びるか?」
一緒に、と付け加えるとクロウは露骨に嫌な顔をした。
普通にシャワーを浴びるだけでは済まないと察したからだろう。
「ふざけんなっつの。後で一人で入る」
後で入る、ということは、まだ触れていて構わないということだろう、と勝手に解釈して剥き出しの肩を引き寄せる。
クロウの身体は特に抵抗もなく、腕の中に収まった。
本気で眠いのかもしれない、と思いつつ止める気はさらさらない。
額にキスを落とし、頬に唇を滑らせる。
頬には、昔よりも増えたマーカー。
子供たちにカードを与えるために、セキュリティの保管庫へ忍び込んでいたのだという。
一番初めに保管庫へ入り込んだのは、自分のデッキを取り返すためだった。
口止めされているのだが、と前置きをして遊星がこそりと教えてくれた。
死んだ、と言われたきり遺品も遺体さえも戻って来なかった京介のために、せめて墓に入れてやろうと危険を冒したのだと。
とんでもない無茶をするものだ。
馬鹿だなぁ、と思う。
自分のためにそんなこと、しなくてよかったのに。
ホントに馬鹿だなぁ、と思う。
こんなに思われているのに、自分の命をまた捨てようとしただなんて。
「・・顔に『クロウ命』とか彫ろうかなぁ」
反省と二度としないための戒めを込めて。
「馬鹿かお前は」
割と本気の呟きは、あっさり切って捨てられた。
「無駄に顔がいいだけが取り柄なのによ」
「ひでえ」
否定は出来ないが、あんまりな言い様に大袈裟にしょげてみせる。
クロウは特に気にもしない様子で言った。
「刺青って皮膚の細胞を殺すから寿命縮むんだって。皮膚癌とかなるらしいぜ」
「マジで」
「ホントかどうか知んねえけど。聞いた話」
それを言うなら、マーカーだって、刺青と似たようなものじゃないだろうか。
こんなに増やしてしまって。
「じゃあ止めとくわ」
独り言のように続ける。



「今度は絶対うんと長生きしてみせんだ」


もう馬鹿なこと言わないから
無茶もさせないから




「うん」
クロウは頷いて、ニッと笑った。
満点とは言えないが、とりあえず及第点くらいは貰えたようだ。
京介は頬に触れていた唇を、クロウの唇に落として聞いた。
「だから」




「もう一回、シていい?」






END






京クロ
クロたんがセキュリティの保管庫にカード盗みに入った一番最初は
京介のためだったという幻想を未だに抱いてる(^^ゞ
刺青の話は聞きかじりです;ホントかどうか確認取ってません。


2009.12.06

 

 

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