■呟いた(京クロ)■
京クロ
遊星たんが京介をぶん殴って強制送還してきましたよ、という妄想 いや予告で腹を殴ってたからさ。
遊星はDホイールの後ろにまるで荷物のように積んでいたモノをどさり、と床に下ろした。
京介だ。 良く途中で落とさなかったものだ。 「鬼柳・・!!」 遊星の帰りをじりじりしながら待っていたクロウは、椅子を蹴って立ち上がる。 遊星は静かに言った。 「殴って、無理やり連れてきた」 「殴って、っておい」 クロウは遊星の顔と、気絶しているらしい床の京介の顔を交互に見た。 遊星は本来、自分から手を出すような性格をしていない。 何か本気で怒らせるようなことを京介はしたのだろうか。 断片的に語られる遊星の話を統合すると、こうだ。 京介はダークシグナーだったころの記憶が戻ってしまった、らしい。 そして大切だった仲間を苦しめたという罪悪感で、死にたいとまで考えるほど思いつめていたようだ。 「オレはデュエルで鬼柳の心に近づこうとしたんだが、鬼柳は頑なに一緒に帰らないと言い張った。それでついカッとなって」 「ぶん殴ったのか」 「すまない」 いや、謝られても。 しかし遊星の気持ちもわからないでもない。 自分だったらもっと早い段階で殴るか蹴りを入れるかしていただろう。 「とりあえず、休め。遊星」 黙って聞いていたジャックが遊星に休息を促した。 遊星は頷くと、クロウに向き直った。 「後は頼む、クロウ」 「えっ」 2階への階段へ向かう遊星と、その遊星を気遣うように寄り添うジャックの後ろ姿にクロウは叫んだ。 「ちょ、待て!オレ一人で運ぶの無理だろ!」 京介は床に寝かされたままだ。 「あ、ぼく手伝う・・」 立ち上がったブルーノは、ジャックに襟首を掴まれた。 そのまま引き摺られて行ってしまう。 後には床に伸びた京介と、途方に暮れるクロウが残された。 とにかく、こんな床の上で寝かせて置くわけにもいかない。 此処はガレージ兼用だから、床はコンクリだ。 こんなところで寝ていたら体が冷えてしまう。 試しに運んでみようとしたが、気を失った人間というものは案外重いもので、引き摺るのが精いっぱいだった。 遊星が寝るなりなんなりして身体を休めたら、ジャックが戻って来てくれるだろうと、希望的観測を掲げて、運ぶことを放棄する。 とりあえず、頭を膝の上に乗っけてやった。 相変わらずさらさらしている髪を撫でつけてやる。 髪が伸びた。 少し痩せただろうか。 ダークシグナーの時に赤かったマーカーは自分と同じ黄色。 どれをとっても見慣れない容姿。 「・・・馬鹿だなぁ」 京介の顔を上から覗き込んで呟く。 カーリーなんてまったく思いだす素振りも見せないのに、何故コイツは余計なことを思い出してしまったんだろう。 「ホント馬鹿だな」 苦しめたとか、そんな済んだこともうどうだっていいのに。 色々考えていたらなんだかむかむかしてきたので、呑気に伸びている京介の額をビシと叩いてやった。 「イテ」 目を開けた京介が自分を見上げる、その金色の瞳に自分がちゃんと映っていると確認する。 「いてえじゃねえよ。この馬鹿!遊星に殴られたみたいだからこれで勘弁してやっけど」 「クロウ」 ばちん、とクロウは両手で京介の頬を挟むと、額を付けて叫んだ。 「苦しめただぁ?ふざけんな、そんな昔のことなんかどうだっていいんだよ!」 「お前が死んじまったら、オレ・・オレたちずっと苦しいじゃねえかよ!」 苦しめたことが死を考えるほど辛いという癖に、死んで、また苦しめることは構わないとでも言うつもりか。 声が震えた。 自分のことばかり考えているとわかっていた。 京介の辛さなど少しもわかっていないと。 それでも、死んで欲しくなどないのだと伝える言葉を他に知らない。 置いて行かれるのはもう嫌だと、叫ぶしか出来ない。 「・・・クロウ」 京介がソロソロと膝の上から身体を起こした。 覗き込もうとする視線を避けて、クロウは顔を上げない。 「・・・うっせえ馬鹿」 「うん、ごめん」 小さく、優しく、京介が笑った気配がした。 そっと腕が伸びてきて、クロウの頬を包む。 「今すごくキスしたいんだけど」 クロウは顔を上げた。 目の前の京介は至極真剣だ。 「・・お前、どうしてそう即物的なんだよ?」 ようやく、自分の見知った鬼柳京介が戻ってきた気がして、クロウは笑った。 「此れって出歯亀っていうんじゃないかなぁ?」 キスを交わす京介とクロウを、ジャックと遊星と共に物影から様子を見守っていたブルーノは、小さく呟く。 しかし、もちろん誰にも届かなかった。 END
京クロ 予告で殴っていたので、昏倒させて強制送還、あとはクロたんに丸投げしてみました(笑) デバガメっつーか 心配して見守っていただけですよ(笑) だってジャ遊夫婦はクロたんの親だもの(違) 余計なのが居ない方が素直にコトが進むじゃないですか。 京介のターンはうれしいけど そろそろクロたん不足です;
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