■黙ることにした(京クロ)■
京クロ
ボルガー戦の後、満足街へデリバリ
「オレが死んだら、オレのことは忘れて幸せになってくれ・・・なんて言っとかなくてよかったなぁ」
ぎゅう、と抱きついて鬼柳が言う。 何なんだコイツ。 「耳元で喋んな。くすぐってぇ」 引っぺがそうとしたけど、上手く力が入らない。 文句だけはしっかり言ったが、離れる気などさらさら無い様なので、諦めた。 最近、よく鬼柳から呼び出しが来る。 子供が熱を出しただの、美味い大福があるから食べに来いだの、育児相談から近所のおばちゃんかお前はってな用事まで、呼び出し内容は多岐に渡る。 鬼柳の居るこの街は、シティからDホイールで来れない距離でも無いけど、日帰りするにはちとキツイ。 鬼柳もわかっていて、絶対に泊まりがけになるような時間に連絡入れてきてる気がする。 泊まらせるのが狙いかよ。 まあわかっていてそれでも来るあたり、オレも相当アレなんだが。 「ピアスンって誰だ?」 首筋に唇を寄せて、唐突に鬼柳が問う。 首も止めろ、くすぐってえ。 髪を引っ張ったけどやっぱり離す気はないらしい。 「・・・昔のオトコっつーたらどうする?」 鬼柳は顔を上げて言った。 「本気にする」 「本気にすんな、阿呆」 ごすん、とその脳天に手刀を食らわせてやった。 「いてえ!」 「つかお前、話聞いてんだろ」 その名前を知ってると言うことは、多分遊星あたりが、ボルガーとの一件の後オレが元気ねえと気遣って話してくれたんだろう。 「クロウの口から聞きてぇ」 「趣味悪りぃな」 知ってるなら別にそれでいいじゃないか。 だってアイツは三年も前に死んでしまったんだから。 「いいじゃん、溜めとかねえで全部吐いちまえよ。我慢してると辛いだろ」 別に我慢なんてしていない。 後悔だってしていない。 オレは、本当のことを知りたかっただけだ。 『オレが死んだらオレのことは忘れろ』 ただ、あの時炎の中で、ピアスンが個人的な問題だと言って、誰にやられたかを黙っていたのは、そういうことだったんじゃないかなんてちょっと思ったりするだけだ。 「ピアスンは、お前が居なくなってから、クサってたオレを助けてくれた恩人だ」 オレの前に現れた、二人目の救世主。 一人目は、死んで、甦って来て、死神になって、いろんなもんになった挙句、またこの町で救世主になって今目の前に居るけど。 「大事だった?」 鬼柳が聞くので正直に答えてやる。 「ああ、ピアスンみたいになりたかった」 大人でカッコ良い男。デュエルも強い。 あんな風になりたいと思った。 でも。 「でもピアスンも死んじまった」 「餓鬼どもが居なかったら、オレはもっとどうしようもないロクでもない奴になってたかも・・って何だよ」 鬼柳の抱きつく腕の力が強くなった。 「オレ、生きてるぜ」 ピアスン、も。 無意識に自分がそう言ったことに其処で気がついた。 「・・そだな。生きてる」 そうだ、生きてる。 せっかく生き返ったのに、死にたがっていたらしい阿呆の頭をもう一回ゴツンと殴って言ってやる。 「次死んだら、おめえことなんか今度こそさっさと忘れてやるからな」 「もう死なねえし」 馬鹿かお前、そんなん無理だろ。 そう言おうとしたけれど、降ってきたキスが温かかったので、黙ることにした。 END 京クロ ボルガー戦の後、満足街へデリバリ。 京介が居なくなった後、今度はピアスンがって クロたんは立て続けに大事な人を亡くしてるのね・・ 京介は戻ってきてくれてホント良かったなぁ。 ボルガが犯人ぽいですけども ホントの悪人ではないとイイナと思います。 じゃないと、ボルガーはピアスンの遺志をついで会社とか作って偉い、 とか言ってたクロたんが可哀想じゃないですか;
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