■報告(京クロ)■

京クロ
墓前に報告






仕事が終わり、ちょっとピアスンの墓に顔出して帰るか、と思って足を向ける。
定期的に顔を出して、元気にやってるぜ、と報告する。
其れはすでに生活のサイクルに組み込まれてる。
Dホイールを止めてヘルメットを外す。
目指す墓の前に、先客が居た。
色素の薄い、髪の長い男。
京介だ。
「・・死んだ奴には勝てねえかもしれねぇ。でも生きてる人間の方が強いって証明してやるぜ」
「てめえは他人の墓の前で何してやがるんだ」
後ろから、げし、とケツを蹴りあげてやる。
クロウが来たことは当然気が付いていただろうに、まともに食らって京介はぎゃあと悲鳴を上げた。
「った!蹴るなよ!墓場で転ぶと寿命縮むっつだろ!」
「2回も3回も死んでおいて何言ってやがる」
「3回も死んでねえ!」
似たようなもんだろ、とクロウは思う。
人間、フツーは死ぬのなんて一回きりだ。
この墓の、主のように。
「つかそんな阿呆なこと墓の前で言うためにわざわざ来たのか」
「宣戦布告しとかねーと、と思って」
「阿呆か」
もう一度足を蹴ってやる。
「じゃあ墓前報告。クロたんをオレにくださいお父さん!」
「誰がお父さんだ。そんな年じゃなかったっつの。・・お前マジで何しに来たんだよ」
本来なら街の復興活動の為にこんな処で油を売っている暇はないはずだ。
この場所を教えたのはおそらく遊星だろうが。
再び上げた足をギリギリで避けて京介は言った。
「ホントは流通ルート確保のためにきたんだよ」
「流通ルートぉ?」
不信感を露わに、語尾が上がる。
「そ、流通ルート」
言って、京介は綺麗に笑って見せた。
「つかあの街はさ、とりあえず食糧とかの流通ルートは確保されてんだけど、その他の嗜好品とかなかなか手に入らねえんだよな。圧倒的に物が足らねえから月に一回くらい定期的に必要なものを届けてくれる宅急便屋を街で契約しておいたらいいんじゃないかと」
「遠いし面倒くせえ」
わざと興味なさそうにそう言ってやる。
京介はうん、と頷いて続けた。
「そう、だから他の宅急便屋はなかなか引き受けてくれねえしさ」
他に頼める者が居ないのだと、京介は言う。
「ネットショップとかと契約して代引きサービスとか始めたら、結構いい仕事になるんじゃね?」
「・・そゆの許可要るんじゃねーか?」
「だからさ、一回許可とっとけばシティ内でだって仕事出来るだろ?」
「なるほどな」
京介の頼みを、最初から断るつもりなんか無い。
京介だってクロウが断るなんて思ってないだろう。
だからと言って素直に受けてしまうのもなんだか癪なので、勿体ぶってみせる。
「労働条件整備してまた鉱石掘り始めたし、あれ、結構いい値で売れるんだぜ」
「あっそ」
サティスファクションタウンは辺鄙なところだが、実は結構金はあるんだぜ、と語る京介の話に、気の無い振りをしながら考える。
とりあえず牛尾を捕まえて話をしてみよう。
管轄は全く違うが、あれで意外に面倒見がいいし、顔も広い。
親身に相談に乗ってくれるだろう。
黙ってしまったクロウに、少し焦ったのか、京介はさらに言い募った。
「とりあえず代引きサービスはともかく、月イチくらいで定期的に来てくれるとありがたいんだけど。もちろん出張代は払うし。今なら一泊2食」
此処で京介は人差し指を立てて自分の胸を指して見せた。
「さらにオレ付き」
大真面目な京介に、冷たく言い放ってやる。
「・・最後のはいらねぇ」
「ええ!ひでえ!!」
ぎゃあぎゃあ喚く京介を尻目に、さっさと停めておいたブラックバードの方へ歩き出す。
スキップでもしそうな足取りだ、と自分で思う。
元気でやっているのだと、ピアスンにも伝わるだろう。


「だってお前、墓前に結婚報告に来たんだろ?」


だったらお前は最初からオレのもんじゃねーか。


そう言ったら後ろから京介がぎゅうと抱きついて来た。




END





京クロ
墓前で結婚報告。
たまにはデレてみた

代引きサービスするのに許可がいるのかとか
その辺はテキトーなので流していただけると嬉しいっす;
あと墓場で転ぶと寿命が縮むって子供の頃脅されたことあるんですけど・・
迷信?


2010.02.07

 

 

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