■心配させろ(京クロ)■
京クロ
予選後でクロたんと青野
ブルーノが朝食の支度をしていると、クロウが器用に片手で寝室からの梯子を下りてきた。
「おはよう、クロウ」 「おう、おはようブルーノ」 クロウはブルーノの握りしめたものを見て言う。 「しっかし目玉焼き作んのになんでタイムウォッチが要るのがわかんねぇわ」 「時間を計れば絶対にいつも同じ味の目玉焼きが出来るじゃないか」 「理数系の言うことは理解出来ねぇ」 何だかんだと言いながら、出された目玉焼き乗せトーストを、美味い、と齧るクロウに、でしょ!と応じる。 「遊星たちはまだ起きてこないのかな」 二人の分の朝食も作り始めようかどうしようか、少し考える。 作っておいて冷めてしまったらせっかくの目玉焼きも旨さ半減だ。 出来たら温かいものを食べさせてあげたい。 大きく口を開けてトーストに齧りつきながらクロウが言った。 「もう少し寝かせておいてやれよ。疲れてるんだろ」 昨日の予選は確かに大変だった。 特に遊星は三連戦となってしまったから、疲れているだろう。 寝かせとけ、というクロウの言葉に頷いて、ブルーノはしみじみ言う。 「勝てて良かったねぇ」 試合を思い返すブルーノに、クロウは澄まして言った。 「ま、負けても良かったんだけどな」 「えっ」 確かに予選は二勝しさえすれば決勝トーナメントへは勝ち上がれる。 しかし昨日の予選中、そんな風に思っているようには全然見えなかった。 クロウだって絶対勝ちたかったはずだ。 「負けて、チーム戦のなんたるかを学んで出直すってのもアリだろ」 「ああ・・まあねぇ」 結局遊星一人の力で勝ったようなものだ。 確かにクロウの言うことも一理ある。 「特にジャックな。アイツほんとチーム戦向きじゃねえ性格してっからよー。ピットインの指示も聞きゃしねえし」 「うん」 それはブルーノもまったく同意見だったので大きく頷いた。 幸いジャックの怪我は軽かったが、クロウはかなり心配していた。 クロウは自分の体験したあの辛さを、ジャックが味わうのが嫌だったに違いない。 「まあアイツのあの性格は昔っからだから、其処んトコは結局他の皆でフォローしてやるしかねえんだけどな」 「うん」 ブルーノは再び大きく頷いた。 「僕ら、チームだもんね」 クロウはアキに完璧な人間などいない、と言ったという。 だからお互いに鍛え合うのだと。 それこそが『チーム』なのではないだろうか。 まあ何にせよ勝てて良かったがな、とクロウはにかっと笑った。 釣られてブルーノも笑う。 「クロウももう少し寝ていて良かったのに」 「んーオレやることあんだわ」 ゆっくり眠るよりもDホイールに触っている方が割と幸せなブルーノが、調整をするためにガレージへ降りるのにクロウは一緒に付いてきた。 何をする気なのかと見ていると、ブラックバードに被せてあったカバーを捲る。 「ちょ・・!駄目だよクロウ!怪我、全然治ってないんだからね!」 乗るつもりなのかと慌てて止めるブルーノにクロウは言った。 「ちげーよ、通信に使おうと思ってさ」 「ああ。『鬼柳』さんか」 ブルーノの言葉に、クロウはうっと固まった。 「・・なんでわかった?」 「え、だって怪我のこと自分で言うからって遊星に口止めしたんでしょ。何時連絡するつもりなのかなって思ってたんだ」 「・・勝ったら連絡入れようと思ってたんだよ・・」 ごにょごにょとクロウが言う。 「早くした方がいいんじゃない?」 ブルーノが促した。 相手の都合もあるだろうし、それに、クロウがこの時間を選んだということは、出来れば他人に会話を聞かれたくないからだと思う。 通信するなら席を外すつもりだった。 「わかってっけどよー・・あーアイツきっとうるせえんだー、何で怪我したんだとか大袈裟にぎゃあぎゃあ騒ぐに決まってる」 クロウはどうにも気が重いらしい。 ブラックバードの前でうんうん唸っている。 「でも予選はテレビで放映されてたみたいだから、見たんじゃないかな」 龍亞と龍可がDVDに撮るのだと言っていた。 鬼柳はすでにクロウが出場していなかったことを知っているのではないかと思って、そう言ってみる。 「・・見たかな、アイツ」 「見たんじゃないかな」 ブルーノは鬼柳という人物を直接知らないが、話を聞く限り、そういう時テレビ放映を見ないタイプではない。 らしくもなく、さらにうだうだと唸るクロウを見ながら、ブルーノは早くした方がいいんじゃないかな、と思った。 聞きなれないDホイールのエンジン音がポッポタイムの前で止まったからだ。 Dホイールの音なら聞き間違えることはない。 「何でもっと早く連絡しとかなかったの」 ずるずると後伸ばしにしたから言い辛くなっているのだ。 「アイツも忙しいだろうし。・・・心配させたくなかったし」 「心配くらいさせろ」 ブルーノではない第三者の声にクロウが驚いて振り返る。 「鬼柳、どうして・・」 「予選にお前出てなかったから」 ああ、やっぱりね、とブルーノは思った。 鬼柳はブルーノの思った通りの人物らしい。 「オレがどんだけお前らに心配させて、世話かけたと思ってんだよ」
京クロ。ちょっと青→黒ぽい? なんか一大イベントだし予選からテレビで流してたんじゃないかなて。 見てたら京介来るよね!って。 しかし負けフラグだと思ってたのにしっかり勝ちましたよ。すげーな。 ユニコーン好きです。 元気そうなクロたんだけど心配くらいさせて欲しい。
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