■おみやげを買いに(京クロ)■

京クロ
エプロンねた。
シンプルだけど可愛いエプロンだなって思ったので。







 

「よう」
ある昼下がり、唐突に京介がポッポタイムに顔を出した。
「おま、連絡くらい寄越せよ!」
飯は食ったのか、と聞くとまだだと言うので、余りモノの野菜を適当にぶっ込んで、ちゃちゃっと炒飯を作ってやる。
「美味い!」
「あっそ、そらよかったな」
本気であり合わせなのだが、喜んで食べる様に頬が緩む。
「ニコも大分上手になったけど、このパラっとしたカンジがまだまだクロウに敵わないなー」
「火力が弱いんじゃね?」
クロウがそう言うと、京介はオレにはよくわかんねえけど、と答えた。
残念ながらサティスファクション元リーダーは作れないことは無いけれど、あまり料理の才は無い。
「今度またアドバイスしてやってくれよ」
「おう」
この前宅配の仕事であの街に行った際に、レパートリーを増やしたい、というニコに簡単なものを教えてやったのだ。
ニコは覚えのいい生徒で、とても熱心だから、教えるのも楽しかった。
あんなカンジでいいのならお安い御用だ。
美味い美味いと嬉しそうに食べ続ける京介の横に腰を下ろして、クロウは改めて聞いた。
「んで、今日はどうしたんだよ」
何かまた問題でも起こしたのかと思って少し心配になる。
そんな心配を京介はあっさり否定した。
「いや、ちょっと許可貰いたいことがあってさ。役場行ってきたんだよ」
町長は何かと忙しいらしい。
「タウン、なんて名乗ってるけど、まあアソコは山奥の集落みたいなもんだからな。いろいろお偉いさんにお伺いを立てなきゃいけないことも多いのさ」
それでもその表情に暗さは見えない。
大変なこともあるようだが、街の復興は進んでいるのだな、と安心する。
「そんでさ、せっかくシティまで出てきたんだし、子供らに何かお土産を買って帰りたいと思って。ちょっと付き合ってくれねえか?」
「おう、いいぜ」
今日はデリバリーの仕事もほぼ終わった。
急ぎの物はもう無いし、後は明日でも大丈夫だ。
丁度いい時に来たものだ。
それにしても、子供に土産を、なんて、父親の代わりが板についてきた、と言ったところだろうか。
とにかく善は急げとばかりに、食べ終わった京介と最近出来たショッピングモールへやってきた。
正直、クロウも此処へ来るのは初めてだ。
買物と言ったら残念ながら専ら安売りが自慢の近所のスーパーだけだから。
後はカード屋くらいだろうか。
ホールの入口で案内板を見ながら言う。
「へえ、此処にカード屋もあんだな。ウェストにはカード関係のモノでいいんじゃねえ?」
「カードか」
「デッキケースとかさ」
「ああ、いいかもな」
さっそくまずそのカード屋へ行ってみることにして移動する。
長い通路を歩きながらクロウは言った。
「ニコは何がいいかなぁ」
「んー人形とか?」
そう言って京介は首を傾げた。
ニコはカードはやらないし、其れもいいかもしれない。
しかし人形遊びをするほど子供でも無い気もする。
「んー・・・それもいいけど、あのくらいの年齢の子が一番難しいんだよな。子供扱いされんの嫌がったりするし」
「ああ・・成程」
京介は心底感心したように頷いた。
「さすがクロウ、子育て経験のある奴の意見は重みが違うぜ」
「なんだそりゃ」
別に子持ちな訳ではないが、確かに何人か面倒を見ていた経験から、クロウは提案してみる。
「アクセサリとかどうだ?髪止めるピンとかゴムとか。女の子はたぶん喜ぶと思うぜ」
「ああ、そういうのは何個あっても嬉しいらしいよな」
そんな話をしながら移動する。
「どした?」
足を止めた京介に、クロウが声をかけた。
京介の視線の先には可愛らしいフリルのついたエプロン。
「ああ、エプロンか。うん、いいんじゃね?」
元々熱心な子だが、可愛いエプロンを付ければ、さらに料理にも熱が入るだろう。
ニコが料理の上達を図ろうと頑張っていることを、京介はちゃんとわかっているのだなと、少し感心する。
クロウの言葉に、しかし京介は言った。
「いや、クロウに似合うかなと思って」
思わずその脳天に拳をお見舞いしていた。
ゴス、と鈍い音がする。
「ったー!!!」
「喧しい!」
大仰に叫ぶ京介をクロウは怒鳴りつけた。
人が、ちょっと感心したというのに。




頑張っている、其れを、誰かが認めてくれるだけで、人はもっとやる気が出るものなのだ。
誰かが自分を見てくれている、そう思うだけで。

ニコの話だと言うのに、我が事のように腹立たしいのは何故だろう。
離れていても、京介は自分のことを見てくれていると思っていたから、だろうか。



フリフリのエプロンがクロウの怒りを買ったと思ったのか、言い訳がましく京介は言った。
「いや、あの・・この間、クロウに教わってる時、ニコもすげえ嬉しそうだったからさ。クロウも楽しそうだったし・・それでお揃いとか、どうかなって」
お揃い。
「は?お揃い?」
思ってもみなかった言葉にぽか、と口を開けるしかない。
「そう、お揃い。クロウ、エプロン無いんだろ?今日もしてなかったし」
エプロンを、してなかった。
炒飯を作ったあの短時間でそんなところを見ていたとは驚きだ。
すぐ仕事に出掛けるクロウは、調理中の油や調味料の跳ねが気になることがあった。
だから確かにエプロンがあった方がいいかなとは思っていたけれど。


そんなことまで、気がついていたのだろうか。



「んなフリフリ使えるか馬鹿っ」
「んじゃこっちは?」
京介はまるでその言葉を待っていたかのように別のエプロンを指し示す。
最初からそのつもりかよ。


嵌められた様でムカついたので、もう一度同じところを殴ってやった。


 

 




END



京クロ・エプロンの話
京介にプレゼントされたの
ニコとお揃いなの
母娘(違)でおそろのエプロンつけて台所に居たら
お父さん(京介)もうニマニマしちゃう!
…というような妄想でした(笑)
だってあのエプロン、シンプルだけど首の後ろで結んだりして可愛い形じゃないですかー

とにかくエプロンネタは何か書いておかねばと思った・・(^−^)


2010.07.04

 

 

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