■幸せを運ぶ烏(京クロ)■

京クロ
七夕(遅刻)







 

「じゃーん!」
「お、どうしたんだそれ」
ポッポタイムに笹を持ってきたのは龍亞と龍可だった。
「七夕だから、皆で願い事書いて飾ろうよ!」
「あーもうそんな時期かあ」
クロウが腰を上げる。
「よっし、短冊作るか!」
「いっぱい願い事書こうね!!」
子供相手にクロウはいつでも率先して動く。
何処からから見つけてきた折り紙やら、要らない紙やら、裏が白紙のチラシでさえも、綺麗に切って短冊に加工していく。
遊星も調整していたDホイールから降りて、其れに参加した。
「ぶら下げる紐かなんか要るよね?ゾラに何かないか訊いてみるね」
ブルーノもパソコンの前から立ち上がって出ていく。
ジャックはマジックを持ってきた。
アキもやって来て、皆で七夕の準備が進む。
クロウは、大体ではあるが大きさを揃えて切った紙を、それぞれに数枚づつ振り分けた。
「まだまだ沢山あっからなー。書き損じても大丈夫だぜ」
「そんなに書くことがあるか」
ジャックが受け取った紙の束を持って言う。
「ジャックは『就職出来ますように』って10枚くらい書いとけよ」
クロウの台詞に龍亞が乗っかった。
「じゃあオレも『ジャックがしごとみつかりますように』って書いとくね!」
「ボクも!」
子供のようにブルーノが手を上げ、ジャックに拳を食らう。
涙目のブルーノが暴力反対!と抗議するいつもの情景に皆が笑った。
ブルーノに悪いと思いつつも、遊星も笑う。
「それにしても一年に一度しか会えないなんて可哀相よねぇ」
「ホントよね」
女の子たちが口々にそう言う。
「ああ、七夕の伝説だね。織姫と彦星は結婚して働かなくなっちゃったから引き離されちゃったっていう」
ブルーノの言葉にクロウと龍亞が再び被せてきた。
「ほらな、太古の昔からやっぱ人間働かなきゃいけねえって話なんだよ」
「成程!」
「そんな話では無いわ!」
ジャックが怒鳴った。
本気で怒っているように見えるが、アレは仲が良いから出来る喧嘩だ。
じゃれてる様なものなので、特に問題は無い。
「もう、七夕は遠く離れた愛する者同士が年に一度だけ会える、ロマンチックなイベントなのよ。ムードがないわ」
龍可の台詞にじゃれていた男性陣が神妙な顔で謝るのが可笑しかった。
まるで年の離れた兄弟のようだ。
騒ぎが収まるのを待って、ブルーノは七夕の話を再開した。
「カササギが橋を架けてくれるんだよね。二人が会えるように」
「カササギって?」
見たことが無いのだろう、龍亞が問う。
「黒地に白い羽の鳥だそうだ」
残念ながら実物は見たことがない遊星は素早くネットで検索して答えた。
「へえ、鳥かぁ」
クロウが感心したように言った。
「鳥が織姫と彦星に幸せを運ぶんだな」
「烏ではないがな」
先ほどの仕返しのようにジャックが言う。
「なんだよ!烏だって鳥だからいいんだよ!!」
食って掛かるクロウを援護するように遊星はネット検索で出てきた事実を告げる。
「鵲はスズメ目のカラス科で、別名、カチガラス、又はコウライガラスと言うそうだ」
「ほれ見ろ!」
烏エライ!とクロウが嬉しそうに言った。
「なんか、七夕楽しくなってきたな!よっしゃ短冊吊るそうぜ!」
わかりやすくご機嫌なクロウの号令で、各自自分の短冊を吊るす作業に入った。
遊星も自分の短冊を吊るす。
何を書けばいいか、正直わからなかったので、WRGPで優勝できますようにとか、皆が一緒に居られますようにとか、無難な、でも叶えたい言葉を書いた。
龍亞と龍可は背の高いジャックやブルーノに自分の短冊を上の方へ吊るして欲しいと頼んでいる。
あの様子では、まだ飾り終わるまでしばらくかかりそうだ。
何か飲み物でも用意しておいてやろうか。
そう思ってその場から離れた遊星は、ふと、クロウが書き損じたらしい紙の中に、見覚えのある名前を見つけた。
鬼柳。
悪いと思ったが、広げてみる。
2行に分けて書かれた其れ。
下の所にブラックバードデリバリーのマークとしても使っている、黒く丸っこい烏の絵が描いてる。


『鬼柳に 幸せがやってきますように』



鳥が、幸せを運ぶ。
先ほどの七夕伝説を受けて書いたのだろうが、何故笹に飾らなかったのだろうか。
書き損じと混ぜてしまって忘れたのか、それとも誰かに見られたら恥ずかしいと思ったのか。
多分、後者だろう。
こっそり、吊るしておいてやろう。
だが、『鬼柳に』なのが、何だか寂しい気がした。
人は、一人きりでは幸せになるのは難しいと思う。
あんな寂しがり屋な奴では、特に。
遊星はマジックを持ってきて、『に』を『と』に書き換えると、さらにその下に言葉を足した。



『鬼柳とクロウに 幸せがやってきますように』



ジャックに下から見え辛い笹の高いところに吊るして貰おう。



 


どうか願いが、叶いますように。





 


END

 

 



京クロ
遅刻七夕ネタ(^^ゞ
カササギってどんな鳥だっけ?と思って調べたら
ウィキ様に別名が出てさ
此れは使わなきゃ!と思った次第。
京介に幸せを運んでくれる鳥はやっぱクロたんだと思うのよ。


2010.07.11

 

 

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