あの街は、Dホイールで行けない距離ではないけれど、少し遠い。
整備されていない土煙ばかりが巻き上がるでこぼこの道を長時間走るのは、正直疲れる。
それでもあの街へ物を届けに行くのが、実は楽しみだ。
顔に出ないように気を付けているつもりだけど、幼馴染達にはとっくにばれてしまっているだろう。
京介に会えるのが嬉しくてたまらない、なんてことは。
やがて、黄色い煙の向こうに、サティスファクションタウン、と大きく書かれた看板が見えてくる。
其処でクロウはブラックバードを停止させた。
水色の髪の毛の男が其処に居るのを発見したからだ。
街の入り口である門を潜ってすぐの所に京介は立っていた。
見たことの無い女と一緒に。
この街もだんだん住民が増えてきているという話は聞いていた。
新しい住人だろうか。
此処に住んでいる人間を全部知っているというつもりはないが、宅配の仕事で時折通っていること、この街の救世主鬼柳京介の知り合いであること、などから街の住民もクロウに好意的だ。
顔を見れば挨拶くらいはかわす。
知らない女はDホイールの音にちらり、と此方を見たがすぐに京介の方へ視線を戻した。
顔だけは無駄に良い京介の隣に並んでも、其れなりに見劣りしないから、まあ美人の部類に入るのだろう。
何だか胸の奥がチリ、と焦げたような気がした。
ムカついた、というのが近いかもしれない。
「クロウ!!」
何故だろう、と考える間もなくさっきまであの女と喋っていたはずの京介が隣に立っていた。
その素早さに吃驚する。
さっきと同じ位置に立ったままの女も呆然としていた。
ちょっと気の毒なくらいな硬直ぶりだ。
「・・・話してたんじゃねえのかよ」
其方をそっと指差して問うと、京介はあっさりと言った。
「もう終わったし」
本当にもうあの女には興味がないという顔だ。
世間話にでも捕まっていた、と言うところだろうか。
もちろんわざわざこんなところで京介を捕まえて話をしていた向こうには付き合いたいとかそういう下心があったのだろうが。
「何クロウ、ヤキモチ?」
クロウの様子をどう取ったのか、京介が訊ねてきた。
覗き込んで来るその顔は、何処か嬉しそうだ。
クロウはその頭をぺし、と叩いて言った。
「ばあか!誰が妬くか」
妬いてる暇もなかったっつーの。
END
京クロ
遠距離だけどらぶらぶ
ちょっとヤキモチ焼きそうになったけど
京介はクロたんしか見てないので。
つかそろそろクロたんの応援に来てください町長。