自分たちの暮らすポッポタイムの狭い洗面所に、歯ブラシが5本立っている。
1本増えていることに遊星は気が付いた。
迷うことなく赤の歯ブラシを手にとって歯を磨く。
この歯ブラシは近所のスーパーで安売りになっていた物だ。
同じもので、色違い。
歯ブラシを間違えないように、それぞれ連想しやすい色を自分のモノと決めた。
クロウとブルーノは髪の色から黄色と青。
ジャックや遊星は、Dホイールの色から白と赤。
買い替えても、この色が遊星の歯ブラシだ。
だから増えているまだ新しいこの水色の歯ブラシが、誰を連想するのかなんてわかってる。
たぶん向こうには、黄色い歯ブラシが増えているんだろうな。
遊星は優しい顔で笑った。
*
コップに立てられた歯ブラシが、1本多いことにジャックは気が付いた。
水色の歯ブラシはこのポッポタイムで暮らす誰の物でもない。
しかし誰の物か、勿論ジャックにはわかっていた。
時々、シティにやって来ては用事のついでに顔を出して行く、アイツの物。
まったく、死んだり生き返ったり死にたがったり。
散々ウチの大事な幼馴染を振り回しておいて呑気なものだ。
とは言え、後ろを振り返りながら歩くことなど、ジャックの本意ではない。
前を向き顔を上げて再び歩き出した彼奴を、しっかりやれと幼馴染が引っ叩く、それは勿論応援する。
泣かしたらただでは済まさんがな。
ジャックは高らかに布告した。
*
1本増えた歯ブラシに付いて、ブルーノはクロウに問いかけた。
「水色の歯ブラシなんて良くあったねぇ」
ワゴンセールで山積みになっていた歯ブラシは、原色の物が多かった。
「だって、あいつ、皆と同じじゃねえとすぐ僻むし。うっせーんだよ」
まるで言い訳のようにクロウは早口で捲し立てる。
濃い色ばかりの山の中から、あの水色を見つけるのは難しかっただろう。
水色の歯ブラシが誰の為の物かなんて、ブルーノだってわかっていた。
鬼柳京介。
彼の為だけにクロウはあの水色を選んで買って来たのだ。
可愛いところがあるよね、とブルーノは思う。
こういう顔が見たくてわざと僻んでみせてるんじゃないのかな。
あまりにニコニコしていたらしい。
照れかくしに振り回された手に、ブルーノはボカリと頭を叩かれた。
END
京クロ
歯ブラシとポッポタイムの皆さん
遊星→見守る。
ジャック→見守る。が、何かあったら殴る気満々。
ブルーノ→余計なことを言って叩かれる。
というカンジ(笑)
フツーに京介が泊りに来てる脳内設定でスイマセン・・