クロウは目の前に立つ人物に大変不機嫌に口を開いた。
「なんで居るんだよ」
「遊星に呼ばれた」
鬼柳は澄ましてありのままの答えを返す。
呼び付けてすまない。
遊星は心の中で詫びる。
クロウは尚も言う。
「・・・お前、仕事は」
実質サティスファクションタウンの町長である鬼柳は其れなりに忙しい筈だった。
クロウが心配するのも無理はない。
何でもないことのように、あくまで軽く、鬼柳は答える。
「大丈夫、片付けてきた」
鬼柳は笑う。
「ドクターストップならぬ、遊星ストップってわけだな」
「なんじゃそりゃ!」
「此処の所働き詰めだろう。オレが言っても休んでくれないから、鬼柳を呼んだんだ」
クロウが怒鳴り散らしそうになったので、遊星は口を挟んだ。
此処の所クロウのブラックバードデリバリーは常連客も増えたようで、文字通り休む暇もない。
遊星も修理の仕事など受けおってはいるが微々たるものだ。
クロウにばかり働かせているようで申し訳ない、そんな気持ちから鬼柳に相談したのだ。
遊星の心情を読んだのか、クロウはもごもご言った。
「だって忙しいし・・て、テメエは何ニヤニヤしてんだよ」
きもい!とクロウは鬼柳をどつく。
どつかれても鬼柳は笑いを止めない。
「いやクロウがオレの言うことなら聞いてくれるんだと思ったら嬉しくて」
「誰がお前の言うことなんか聞くか!オレは仕事あんだよ!」
此処でブルーノがハイ、と手を挙げた。
「今日はボクが配達するよ!」
ええー、と胡散臭げにクロウはブルーノを見る。
「大丈夫、クロウの得意先減らしたりしないから」
「お前は何時も一言多いからなぁ」
クロウは尚も渋る。
「でもボクちゃんと愛想よく挨拶出来るよ。ジャックに任せるより安心でしょ」
「其れが一言多いつーんだよ」
ジャックが居なくて良かった、と遊星は思う。
この場にジャックが居たら、クロウの言うとおりまた大騒ぎになっていただろう。
一言多いブルーノはそれでも必死に言い募る。
「気を付けるよ!」
ブルーノは1,2歳の誤差はあるだろうけれど、自分たちと同世代だと思う。
しかし記憶喪失のせいか、まるで子供のように無邪気で素直な面を持っていた。
そして、クロウは子供に弱い。
ブルーノの、頑張るから、の言葉に押されている。
後、もうひと押し。
「オレも一緒に行く。・・それなら心配ないだろう?」
無口で愛想がいいとは言えない、と遊星は自分のことを思ってはいたが、ブルーノの愛嬌があれば其処は何とかなるだろう。
何より幼馴染の自分への信頼は強い筈だ。
クロウはようやく首を縦に振った。
「まあ、遊星が一緒なら・・」
「おっし決まり!」
鬼柳が後ろからがばっとクロウに抱きつく。
「じゃあクロウはオレとお休みタイムだ」
「なんじゃそりゃ!お前は要らん!帰れ!!」
口調は辛辣だが、真っ赤な顔が其れを裏切っている。
「つか何でお前となんだよ」
「添い寝係に立候補したんで」
「か え れ!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぎながら上に向かう。
その二人の後ろ姿を眺めながらブルーノが言った。
「アレで休めるのかなぁ・・?」
クロウの身体を考えて、休ませるための日にする筈だったのに、とブルーノは心配そうだ。
「大丈夫だ」
遊星は答えた。
問題ない。
身体を休めるより、心を休める方が、ずっと満たされることもある筈だから。
「さあ、出掛けよう」
ブルーノを促して一緒にポッポタイムを出る。
今日は一日、二人きりにしてやるために。
END
京クロ
京クロ
休日にクロたんは京介とまったり。みたいな。
すぴっつのシロクマを聞きながら
もにゃもにゃ妄想した結果出来た文でした☆
ジャック不在でスイマセン・・