■吸血鬼(京クロ)■

京クロ
ダグナー黒京介
遊星たんが寝込んでる間に来た感じで。














「久しぶりだなァ、クロウ」
赤い月を背に、京介が言う。
明るい月がその表情を影にし、壁を背に立つクロウから隠す。
「ああ、そうだな」
クロウの返答に、にやり、と京介が笑うのはわかった。
近づいてきた京介の腕が上がった。
その指がクロウの頬をツ、と滑って行く。
「こんなにたくさんマーカーつけられて・・馬鹿だなァお前は。クロウ」
ゆっくりと指を滑らせながら京介は楽しそうに言う。
「どうせ餓鬼共のためにつまんねー盗みとかしてんだろ・・・ホントに馬鹿だなァ・・全然変わってない」
馬鹿だ、と言いながらその響きは何処か昔と変わらぬ音を滲ませていて、あの頃の京介がまだこの男の内に生きているのではないかと思う。
だが、京介は変わってしまった。
「お前は大分変っちまったみたいだな」
「変わった?」
高く高く、狂気を含んだ声で京介は笑った。
「そうさ、オレは変わった」
一頻り笑った後、京介はいきなりがん、とクロウの肩を壁に押し当てた。
「一度死んでいるからな」
昔のオレはもう居ないんだよ。
先ほど抱いた淡い期待を打ち砕くように京介は言う。
「死んで、黄泉の淵から戻ってきたんだ」
「・・・そりゃよかった」
クロウの呟きを京介は聞き咎めた。
声が鋭くなる。
「よかった?何がだよ」
クロウはまっすぐ京介を見据えて言った。
「お前に」


「また会えて」


もう2度と会えないのだと思っていた、お前にまた会えて。



「は、」
京介はまた高く笑った。
「馬鹿だなァお前は本当に。・・・クロウ」
抱きしめるようにクロウの体に腕を回し、京介は耳元で囁く。
「オレはお前たちを殺すために舞い戻った」

「ただの生きる死人、屍だ」

屍だというのなら、この温かみは何なのだろう。
以前と、変わらない。
クロウの首筋に顔を伏せたまま京介は低く呟いた。
「ああだがゾンビなんかじゃなく、いっそ吸血鬼とかになればよかったなァ」
言うなり、京介はクロウの首筋をガリと齧った。
「っつ」
血が滲むほど強く噛まれて、思わず息を飲む。
その様子に京介は3たび高く笑った。
「吸血鬼なら今頃噛まれたお前は、オレ達ダークシグナーの仲間だ」
先ほど頬をたどった指を、今度は噛んだ傷跡に強く押し付けて、京介は楽しげだ。
「仲間?オレ達を殺しに来たんじゃなかったのかよ?」
何を馬鹿なことを言い出したのかと吐き捨てる。
「そうさ」
京介はさも愉快だ、というようにまた笑った。
「遊星たちを裏切ってオレの仲間になる」


「死ぬより辛いことだろう?」


京介の仲間になる。
それは、辛いこと、なのだろうか。



赤い月の光が思考を掻き乱し、クロウはその問に答えることが出来なかった。







END







京クロ
勧誘に来ました(違)
いやクロウたんに向こうに行かれたら私が泣くけれども!
でもダグナー人材不足よね。

しかし満足組時代とのテンションの違いに我ながらおいおい、って感じ(^^ゞ
共通点はなんかメンドクさい男であるということくらいか・・


2008.11.30

 

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