ブルーノが居なくなったポッポタイムはやはり寂しかった。
短い間にどれだけ彼が仲間として此処に馴染んでいたのかがわかる。
それは勿論ブルーノのメカニックとしての腕もあるが、それよりも彼の人柄によるところが大きい。
身体は大きいくせに、気の優しいおっとりとした男だった。
未来から来た、本来ならば生まれても居ない、此処にいる筈のない人間。
それでもブルーノは確かに此処に居たのだ。
チーム5dsの仲間だった。
アーククレイドルが消滅して、遊星も無事戻ったというのに、沈みがちな皆を叱咤したのはジャックだった。
「何を暗くなっている!シティは守られた!此れは目出度い事だろう」
ジャックは言った。
「遊星も言っていたが、このことをオレ達が忘れず語り継いでいくならば、必ず未来は変わる!そうすれば奴もゾーンも、アポリアも、絶望など無い幸福な人生を得られるだろう。悲しむところではない、むしろ祝わないでどうする!」
ジャックの言葉は不思議な説得力がある。
何処か、ああそうか成程、と納得する響きがある。
「そう・・そうだよね!」
まず龍亞が賛同し、それにクロウが乗って、事件から一週間ばかり過ぎたある日、遅まきながらWRGP優勝祝いも兼ねて、祝賀の席を設けることになった。
皆で準備をし、ガレージに用意した机の上に料理や飲み物を並べる。
年齢を考えればジャック以外はNGな筈だったが、何故か酒類も用意されている。
鬼柳が此方に到着したのは、まさに宴も闌となった時刻だった。
「クロウがこんな酔っ払ってんの初めて見たかも」
鬼柳が驚くのも無理はないかもしれない。
確かに珍しい事だ。
来る筈の鬼柳はなかなか到着しないので先に始めてしまったことがアダとなったらしい。
「おめえがいつも先に騒ぐわ絡むわ吐くわ、挙句サッサと寝ちまうからオレが酔えねえんだろが!」
そういえば昔チームを組んでいた頃はそのパターンが多かった。
当時も今も自分たちは未青年であったことはとりあえず棚に上げておくとして、それで酔い潰れるクロウを見たことが無かったのだな、と納得する。
「スイマセン」
酔っ払いの小言に鬼柳は素直に謝った。
謝るのが得策だろう。
鬼柳の判断は正しい。
しかし酔ったクロウは結構しつこかった。
鬼柳に顔を寄せて問う。
「つかなんでお前酔ってねえの」
「今着いたとこだから」
まだ一口も飲んでませんという真っ当な鬼柳の返答に、クロウは缶ビールを押し付けた。
「よっし、飲め!カキクケ3杯って言うだろ!」
「駆け付け3杯だろ、それ。いやオレホント今着いたとこだから何か腹に入れないとマジ吐くって」
もともと鬼柳は酒にそう強くはない。
絡むクロウをなんとかかわそうとしたようだが、残念ながら失敗に終わった。
「このクロウさまの酒が飲めねえってのか!」
「飲む飲む!飲みますって!」
酔っ払っていなくとも、基本鬼柳がクロウに敵う筈が無いのだ。
惚れた弱みという奴だろう。
クロウと鬼柳のやり取りを見ていたジャックが言った。
「なんだクロウの奴、絡み酒か」
珍しいな、と言外に滲んでいる。
ジャックもアソコまで酔ったクロウを見るのは初めてだろう。
「そうだな」
遊星は答えて言った。
「顔を見るまで、不安だったんだろう」
END
京クロ
大丈夫、ちゃんと居るよ
京介も本来ならもう居ないかもしれなかった存在だからってことで。
こんな話を書いておきながら
私はまだブルーノちゃんを諦めていないよ。
もしかしたら次回フツーに居るかもって期待しているよ。