今季は我がチームが勝利して幕を閉じた。
其れも此れもクロウ・ホーガンの働きによるところが大きい。
チームの要として、またムードメーカーとして、クロウの存在は今や必要不可欠だ。
クロウをスカウトしてこのチームに連れてきた自分も、我が手柄のように誇らしい。
明後日からの長期のオフ、クロウはシティに帰るのだと言っていた。
友人たちの顔も久しぶりに見たいから、と。
その前に労いも兼ねて、一杯どうか、と思って手土産持参で部屋を訪れた。
部屋飲みではなくもっと高級な店に誘ってもいいが、そうするとクロウの方が敷居が高いなどと言って敬遠するからだ。
勧誘時に時間がかかったせいか、クロウとは割と親しい間柄だと言える。
クロウ曰く、しつこく側に居たせいでもう仕方ないからだそうだが、ちょっと一緒に飲むくらいの気安さはある。
スカウトマンと選手という関係としてはマズイのかも知れないが、それでも惚れこんで連れてきた選手と飲むのは楽しい。
そう思ってやってきたのに、クロウは小旅行の準備で此方の相手などする余裕はないようだ。
よほど里帰りが楽しみらしい。
遠足前の子供のような表情でトランクに荷物を詰めている。
それでも追い返されずに部屋に上げて貰えたのは、やはり其れなりに親しいからだろう。
持ってきた酒と、其れにクロウが出してくれたツマミがテーブルの上に並ぶ。
「たいしたもんねえけど」
「いや十分だ」
しばらく留守にするから冷蔵庫ん中何も入ってねえわ、とクロウはグラスを持ち上げながら言った。
オフの間、ずっと向こうで過ごすつもりらしい。
そう言えば、移動に使うからとブラックバードも向こうへ持って行くという話だった。
酒を飲みながらも、何処かウキウキして居る様に見える。
「まるで恋人にでも会いに行くみたいだな」
「ええっ?!!」
からかうつもりで軽く口にした言葉に、クロウは思った以上にびくりと反応した。
「…そんな風に見えるか?」
頬が赤いのは酒が入ったせいばかりとは思えない。
どうみても『図星です』と言った表情だ。
…どういうことだ。
クロウには恋人と呼べるような女は存在しなかった筈だ。
クロウをスカウトするに当たって、身辺は調べつくした。
付き合っている女でも居て、後々何か揉め事を起こしてスキャンダルになるのは困る。
せっかくみつけた金の卵、そんなくだらないことで失うのは惜しい。
そう思ったから特に女関係は念入りに調べたが何も出てこなかった、筈だ。
シティに居た頃は特にそんな関係でもなかったが、此方に来てから連絡を取り合ってそういう仲になった、とでも言うことか。
いやそう頻繁に向こうに戻っては居ないし、まだクロウの片思いと言うこともありえまいか。
しかしもういい大人なのだから、恋人の一人や二人存在しても特に問題は無いだろう。
そうは思うものの、此処まで惚れこんでチームに連れてきたクロウが、そんな風に頬を染める相手が居るだなんて、考えただけでイライラする。
腹の底から黒い塊でも吐き出しそうだ。
まるで嫉妬でもしているかの、ような。
其処で思考を中断した。
まさか、あり得ない。
酒に酔っただけ。
一人の選手に此処まで肩入れするとはスカウトとして失格だ。
そう思ってグラスの中身を胃に流し込む。
旅行前に二日酔いさせる訳にもいかないしな。
結局どう聞いても言い訳にしか聞こえないようなことを口にしながら、逃げる様にクロウの部屋を後にしたのだ。
酔ったせいだと言い聞かせながら。
END
京クロ←スカウトさん
お休みに京介に会いに行くので
ウキウキしてるクロたん。
京介の前ではそんなトコ見せないけど
他の人の前ではバレバレとか可愛いなって。
スカウトさんはアレです、地獄の果てまでついてっちゃうんですもん、絶対クロたんに惚れてるよね!!