刷り込みと言うものはある意味やっかいだ、と思う。
小さい頃からマーサという女性の所で共に育ってきた3人は、風呂は何時も一緒に入ってきた。
3人から5人で纏めて続けて入れば節電にも節水にもなるし、大きな子供は年下の子供の世話を焼く習性も付く。
そうやって大きくなった子供達は、当然のようにマーサの所を出てからも其れを続けていた。
3人にとっては其れが当たり前、他の場合を知らないのだから仕方が無い。
其れに異を唱える他者が居なかったのだから。
此処で後からこの3人に加わったマーサハウス出身者以外の京介は当然吃驚した。
小さい頃ならばともかく、此れだけ図体がでかくなって皆で一緒にお風呂なんて信じられない。
もしかしてデキているのかと勘繰ったほどだ。
幼い頃から容姿的に恵まれていた京介は女にも男にもモテた。
だから男同士の云々も知っていた。
そう言う訳で変に勘繰って見たりしたのだが、そんな様子はまったく無かった。
年上の二人がまるで保護者のように一番下のチビっ子を可愛がっている、それだけだ。
そう刷り込みされてしまっているのだから修正するのは難儀だ。
そんな訳で鬼柳京介はその辺りのことは我関せず、とばかりに放置しておくことにした。
のだが。
ある日突然、放って置いたツケが回ってくることとなった。
その日、ジャックは所用でアジトに居なかった。
遊星は機械弄りに熱中したら此方の話など聞こえなくなってしまう性質だ。
「んじゃ、鬼柳一緒に入ろうぜ」
其処でクロウは『一緒に風呂に入る』相手として京介に白羽の矢を立てたわけだ。
「いいけど、オレ、ホモだからな」
一緒に入ったらそういう目でクロウの裸をじろじろ見るぞ。
勿論、冗談である。
本気が混ざっていなかったかと問われれば残念ながら否とは言えないが、冗談で済ませられる調子で言った筈だった。
しかしクロウはどん引きした。
わかりやすく京介から離れ、戸口の近くまで下がった。
いや其処まで引かれると正直辛い。
可愛いなぁと思っている相手だけに本気で悲しい。
「ちょ、冗談だろが!そんなどん引きしたらオレ泣くぞ」
ソファのこっち側でえーん、と泣き真似してみせるとクロウはそろそろと此方に戻ってきた。
まあ正直すでに「そういう目」でちょっと見ているからこそ一緒にお風呂などという事態は遠慮したい訳なのだが、誰かと入るのが当たり前な子供は其処のトコを理解してくれなかった。
「何で一緒に入るのヤなんだよ」
ぷう、と頬っぺたを膨らます様は子供っぽくて本当に可愛い。
京介のどん引きの冗談を、自分と一緒に入るのが嫌だから、つまり自分のことが嫌だから、と取ったらしい。
誤解だ。
さて誤解を解きつつ、どうやってやんわり一緒にお風呂をお断りしたものか。
思考を巡らせていると、ふいにクロウが言った。
「わかった!お前まだ生えてないんだろ!」
…ナニがですか。
悪いけれども3つも年上なのだ、そんな訳が無い。
「オレもちっと前までジャックによくからかわれたわ〜」
お前なんか色素薄いもんな、うんうん、と勝手に納得してクロウは頷く。
肌も白いし髪の色もこんなだし、色素は確かに薄いかもしれないが、毛が薄いみたいな言い方しないで欲しい。
京介は手を振った。
「いやいや、違うって」
自身の名誉の為に其処の所は否定しておかなければ、と思ったが逆効果だったようだ。
この悪餓鬼めと言いたくなるような顔でにんまり笑う。
「じゃあ見せてみろよ」
「ちょ、待てって!!」
言うが早いかクロウはソファの背を飛び越えて京介に伸しかかってきた。
あっという間に乱闘モード、此方は子供相手に手加減しつつ、ズボンを脱がそうと迫ってくるクロウに苦戦気味だ。
どうにか体勢を入れ替えて自分が上になる。
こうなれば体格差もあるし、滅多なことでは負けたりしない。
しかし負けず嫌いな子供は余計大暴れする。
此れはヤバイ、と思った瞬間怒鳴り声がした。
「貴様ら、何をやっている!」
ジャックだ。
睨みつけてくるジャックに自分の今の状況を改めて振り返る。
半分脱げかけたズボンで、クロウの上に馬乗り。
今の状況でこの保護者に何を言っても残念ながら通じそうもなかった。
END
満足時代・京→クロみたいな。
クロたんたちマーサハウス時代に一緒のお風呂入ってたら可愛いな
っつー妄想と
満足時代クロたん14歳かああ❤
そういうハナシには興味アリなお年頃よね〜
ってな妄想を混ぜたら
↓の毛のハナシになったという…(^^ゞ
スイマセン