■しっぽ(京クロ)■

京クロ
ポッポタイムでブルーノちゃんと初対面











 


「ただいまーっと、あれ遊星は?」
「おかえりクロウ。パソコンの調子が悪いから修理して欲しいって言われて其処の角の家まで出掛けたよ」
ジャックは、って聞かない辺り、また前の喫茶店にでも居たのかな。
ボクは冷蔵庫から麦茶を出した。
本当はジュースとか炭酸の方が好きみたいだけど、あいにく買い置きが無い。
ちゃんと煮出して作った奴だから水に入れるだけのよりは美味しい…と思って貰えるといいんだけど。
クロウは今日はこれで仕事はおしまいみたいなので、ボクも付き合って一緒に休憩する。
そうしてしばらくクロウと近所の子供がどうとか、あそこの店の安売りに付き合えとか、そんな他愛もない話をしていたら来客があった。
長身の、白っぽい髪の人。
多分大抵の女の人がハンサムって言うと思う。
「鬼柳!」
クロウがあっという間に立ち上がった。
鬼柳。
その名前は聞いたことがある。
遊星たちの昔の仲間、一度は敵対したこともあったみたいだけど、今は遠くの町で町長をしてる。
何度も名前を聞いたことはあったけど、会うのは実は初めてだった。
こんなハンサムさんだったんだ。
ジャックもそうとう美男だと思うけど、この人も相当いい男だ。
尤もボクが聞く『鬼柳』という人の話は、馬鹿だの寂しがり屋でどう仕様もない奴だの、そんなことばかりだ。
主にクロウから聞く話だけど。
だけど其処には別に悪口を言ってるわけじゃない、親しいからこその親愛、とでも言ったら近いだろうか、そんな感情が籠ってるってボクは感じてた。
実際喋っていたボクを放っておいてクロウは向こうへすっ飛んで行ってしまったわけだし。
仲がいいんだなぁ、と微笑ましく見ていたら、クロウが此方を振りかえった。
「ブルーノ、コイツ鬼柳」
「はじめまして。話はいつも聞いてるよ」
ボクも立ち上がって挨拶する。
クロウはその後ボクを鬼柳さんに紹介してくれた。
「鬼柳、前話したろ。記憶喪失のメカニックが居るって。コイツがブルーノ」
「はじめまして」
にこっと鬼柳さんが笑った。
綺麗な笑顔。
女の人なら此処できゃあとか言うんだろうな、こういう顔を見たら。
ボクは感心してその笑顔を見ていたんだけれど、クロウはむにっと頬っぺたを引っ張った。
ええっ、何が気に入らなかったの。
ヤキモチでも焼いたのかしら。
「コイツは記憶喪失で、ガキどもと変わんねえって言っただろ。もちっと愛想よくしろ」
「ふぁあってりゅって」
ガキどもと変わらないって…酷いよクロウ。
言われたことはちょっとショックだけど、ようするにボクには愛想よく見えた笑顔も、クロウには何考えてるかお見通しだったってことらしい。
妬いてるのは鬼柳さんの方だった、ってわけだ。
やっぱり付き合いが長いとそういうのもわかるんだね。
付き合いが長いだけじゃなくて、相手のこと好きじゃなかったらわからないことなんだろうな。
ちょっと羨ましいよ。
「クロウって鬼柳さんのこと大好きなんだね」
思ったままを口にしたらクロウが吃驚した猫が尻尾をボンッ!って膨らました、みたいな顔をした。
いや別にクロウに尻尾があるわけじゃないけど、何かもう例えるなら毛が逆立っちゃってるカンジ。
ボクの言葉にものすごく警戒しちゃってる、みたいな。
あれっ何か悪いこと言ったかな。
「そういえば人を紹介する時って身内を先に紹介するのがマナーなんだってね。鬼柳さんはクロウにとって身内同然てことだね」
この間知った紹介する時のルールを、フォローするつもりで言ったらクロウの尻尾は益々ぶわわわわっ!って膨らんだ。
何で何で?


「ご、ごめん。えっと、ごゆっくり」

 



これ以上何か言ったらバリバリ引っ掻かれそうなのでボクは2人きりにしてあげることにして逃げ出した。

 





END






京クロ
ポッポタイムでブルーノちゃんと京介初対面。
青野に悪気はさらさらないが
いきなり「大好きなんだね」とか言われて
恥ずかしいのと照れてるのとでぎゃあってなっちゃうクロたんが
可愛いかなって。
ネコの例えなのはブルーノちゃんがネコが好き(多分)なせいです。







2011.09.11

 

 

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