幼馴染達よりも少しばかり年上であったこと、子供の頃から背も高かったことなどもあって、ジャックは自分が『お兄さん』であるという自覚を持っていた。
遊星やクロウよりも大人なのだから、自分が奴らを守ってやらなくてはならない、そう思っていた。
特にクロウは他の子供と比べても背が低く小さかったので、そういう対象になり易かったのだろう、虐められる事もあった。
後からマーサハウスにやってきた新参者であったせいもあるかもしれない。
あの頃は、泣き声が聞こえると飛んで行って相手を怒鳴りつけてやったものだ。
今となっては半べそをかきながらジャックのシャツの裾を掴んでついて歩いていた頃が懐かしい。
それでもジャックにとって未だ幼馴染たちは大切な庇護対象なのだ。
「ぎゃあ!」
幼馴染の叫び声を聞きつけてジャックは部屋へと駆けつけた。
今の時間ならば多分自室、と思って飛び込んだが、其処には居ない。
何処だ、とジャックは声を張り上げる。
「クロウ!」
「ジャック!」
呼びかけに別の部屋の方から声がした。
鬼柳の部屋の方だ。
「どうした、クロウ!」
ジャックの姿を認めた途端、鬼柳はぱっとクロウから手を離した。
放たれたクロウは鬼柳の膝から逃げ出して、ジャックの方へ駆け寄ってくる。
「どうした!」
ジャックの再度の問いかけに、クロウは訴えるように言った。
「耳舐められたあ!」
「なっ」
そんなに大袈裟に騒ぐことではないかもしれない。
しかし悪ふざけにしては性質が悪い。
サテライトには女が少ない分、そういった嗜好の輩が多々居ることをジャックは勿論知っていた。
知っていたが、よもやウチの大切な幼馴染に手を出そうなどという不逞の輩が居ようとは。
それがチームのリーダー鬼柳でもジャックは当然容赦はしない。
むしろ、鬼柳がそういう嗜好の元、クロウに手を出そうなどと考えたのならば、二度とそんな気を起こさぬよう、此処でガツンときつく一発かましておかねばなるまい。
「鬼柳、貴様っ…」
言い訳次第では許さん。
しかし当の鬼柳はジャックの剣幕にも特に言い訳をする様子もなく楽しそうに笑っている。
鉄拳制裁を加えてやろうと鬼柳に近づこうとしたジャックのシャツをクロウが引っ張った。
子供が側に居て欲しいと意思表示する時のような昔と同じその仕草にジャックは慌てる。
なんだ、まさか耳を舐められた他にも何か酷い事でもされたのか。
もしそうならば鬼柳め、殴るだけでは済まさん。
…と、ジャックは拳を握り締めたが。
「キサマ、人のシャツで耳を拭くな!!!」
ジャックのシャツで舐められた耳を必死に拭くクロウに、鬼柳はげらげら笑い転げている。
完全に戦意を喪失したジャックはクロウを引っ張って部屋を出て行くことにした。
2度とするなよ、と両方にくぎを刺すことは忘れない。
それでもジャックにとってこの小さな幼馴染は大切な庇護対象なのだ。
END
京クロ
保護者ジャック
お兄ちゃんと言うよりはすでに親父である。
ウチの可愛いクロウを嫁に貰いたいのならば
まずオレを倒してから行け!的な(笑)
そして相変わらず14歳クロたんに夢持ってる私だ(^^ゞ