「この悪戯子烏め!」
遠くから聞こえた声に遊星は作業の手を止めて顔を上げた。
鬼柳だ。
壊れた機械を直して売るのはこのチームの貴重な財源でもあり遊星の重要な仕事だ。
その為細かい作業をする時は奥の一室を専用に使わせて貰っているのだが、こんな処まで聞こえるほどの大声を出すとは。
喧嘩でもしたのだろうか、珍しい。
烏、と言うからには当然相手はクロウだろう。
さて何をしでかしたのか。
そう思っているうちに扉がいきなり開いた。
「わり、遊星匿ってくれ!」
飛び込んできたクロウは遊星の返事も待たず作業机の向こう側へ回り込んで蹲った。
そうするとクロウが小柄なせいもあってドアの方からは見えない。
「何をしたんだ、クロウ」
匿ってくれ、などと言う割には、クロウの様子はまるでかくれんぼでもしているように楽しそうだ。
其処へバンダナを締め直しながら鬼柳がやってきた。
「遊星、クロウ来なかったか」
「どうしたんだ」
鬼柳の問いにYesともNoとも答えず遊星は逆に訊ね返した。
「あの悪戯子烏、人が転寝してる間に顔に落書きしたんだよ」
顔、とは言っても見える処に落書きなど無い。
バンダナを締め直してきた、と言うことはやはり額に落書きされたのだろう。
鬼柳はいつもバンダナをしているのだから普段は見えないし、問題は無さそうだが、書かれたものが問題なのだろうか。
額に書くとしたらやはり定番の「肉」とか「中」などの文字だろうか。
クロウがもう我慢出来ない、という風に机の向こう側で笑い声を上げた。
「あ、このやろっ」
鬼柳もすぐ気が付いてクロウを確保する。
「お前、せめて黄色で書けよ!」
「黒しかなかったんだよ」
クロウはけらけら笑いながら黒のマッキ―を振る。
油性か。容赦ないな。
「何を書いたんだ、クロウ」
正義超人の「肉」か、と遊星が聞くとクロウはそれじゃフツーすぎでつまんねえじゃん!とまた笑った。
「だから」
「お揃い!!」
自分の額を差してクロウはニカッと笑った。
成程、Mと書いたらしい。
「あーもう、可愛いことしやがって!!」
鬼柳がクロウを抱きしめてついでにぐりぐりと頭を掻き回す。
やめろ、と言いながらもクロウも楽しそうだ。
どう見ても喧嘩をしている雰囲気では無い。
なんだ、じゃれてるだけか。
それならば特に問題は無いと、二人を放って置いて遊星は作業に戻ることにした。
END
京クロ+遊星たん
顔に油性マジックで悪戯書きされても
ニコッと笑って「お揃い!」とか言われたら怒れないよな〜と思って。
子ガラスっつーのは
要くん(君/と/僕/鬼柳の中の人)が千鶴を子猿と呼ぶので
なんか可愛いかなと思って