■その笑顔が(京クロ)■

京クロ
10年後京クロ。













 


年齢から言って一番大人な筈なのに、まるで子供みたいな顔で笑った。



この街もずいぶん変わった。
ダイン鉱石を掘る労働者と言えば昔は辛くキツイ大変な仕事だったらしいが、今は改善されて、結構な高収入のいい仕事だ。
設備も保険も労働条件も勿論整っている。
其れを先頭になってやってのけたのが鬼柳だ。
今でもこの街で、この街をもっと良くするために頑張っている。
だからクロウは此処へ来るたびに大きな声で言って回りたくなるのだ。
どうだ、すげえだろ鬼柳は!馬鹿だけどな!!
最後のは余計だ、と鬼柳は言うだろう。
拗ねて見せてからいつものように笑うのだ。
子供みたいな顔で。
10年前は子供なんてニコとウエストくらいしか見かけなかったが、何人か集まってデュエルをしていた。
環境が整ったおかげで家族でこの街へやってくる者も増えたらしい。
そのうちの一人が此方を見て声を上げた。
「あっ、『鉄砲玉のクロウ』だ!」
鉄砲玉のクロウ。
そう呼ばれたことに少し吃驚した。
最近はデュエルレーンの黒い弾丸とか他の二つ名で呼ばれることが増えた。
世間的には其方の方が定着しているのかと思っていたのだ。
自分で名乗る時には『鉄砲玉のクロウ様』を使う方が断然多いのだけれど。
ようするに気に入っているのだ、『鉄砲玉』という響きが。
此れは鬼柳がくれた名だ。




真っ先に飛び出して行っちまう、まるで鉄砲玉だな。
だから先鋒、切り込み隊長はお前に任せる。ぴったりだろお前に。


身体が小さくて、マーサハウスに来た頃は大人しい子供だった。
幼馴染達の後をただ付いて回っていた。
そのせいか幼馴染達は何かとクロウを子供扱いした。
クロウはずっと被保護者だった。
早く大人になりたかった。対等な扱いをされたかった。
『鉄砲玉のクロウ』
その名はクロウにとって初めて一人前の男であると認めて貰った称号だったのだ。



「ねえサイン頂戴。クロウ」
「おう、何か書くもんあるか?並べよー順番だぞ」
わらわらと寄って来た子供達の求めに応じてペンを取る。
其処へ別の声がした。
「クロウ!」
クロウは紙から目を上げずに言った。
「鬼柳、オレは字を書いてんだからな。今飛びついてきたら殴るぞ」
其れでなくてもオレは字が下手なんだからな。
先に釘を刺すと鬼柳は言った。
「わかった、じゃあ書き終わったら飛び付くから言ってくれ」
「阿呆かお前は!!」
飛び付くのは決定かよ!


呆れて怒鳴ったら、奴はやっぱり変わらない子供みたいな顔で嬉しそうに笑っていた。


 



END





京クロ
満足街では町長がそう呼ぶので皆「鉄砲玉のクロウ」と呼ぶ訳です
早く大人になりたかったクロたんと
一応年上のくせに子供な京介
でも無理に変わらなくてもよくね?的な。
ようするに10年後も馬鹿っぷる。



2012.08.05

 

 

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