■正月の光景(京クロ)■

京クロ
お正月













 

「なんだこりゃ」
ポッポタイムの片隅でソレを見つけたのはクロウだった。
初めて見るもの。
サテライト育ちの面々は其れを見たことが無かった。
「これは餅つき機だろう」
ジャックがそう言った。
「ああ、そういや、絵本の挿絵にこんなんあったわ」
さるかに合戦?とかだっけか。
クロウがポン、と手を打った。
「昔は毎年使ったんだけどねえ」
家主のゾラが言う。
商店街で正月に餅つき大会をやっていたのだそうだ。
木で出来た其れを触りながらあちこち見ていた遊星が大真面目な顔で言った。
「それで此れは一体どうやって動かすんだ」
モーメントで動くものなのか。
至極本気の質問に、流石のゾラも吹き出した。




話を聞いて鬼柳も笑った。
「機械じゃねえよ、手動だろ」
「知らなかったんだ、仕方ない」
何処か拗ねたように遊星が言う。
子供のようなその反応に再び鬼柳は笑った。
まあ知らない物が目の前にいきなり現れたら、そう言う反応示すよな。
ほんの2歳ほどの差なのに、杵と臼を知っていると言うだけで自分がものすごく年寄りになったような気分になるのは何故だろう。
クロウと子供達は餅つきに興じていた。
クロウが杵を振り上げ、子供達が手水を付ける。
息の合った動きだ。
楽しそうな様子が何とも微笑ましい。
「まあでも子供は順応がはえーよな」
呟いた言葉に突っ込みが入る。
「その『子供』にオレを入れるな!」
一番はしゃいでたのどう見てもお前だったけどな、と鬼柳は言わない。
勿論横の遊星も笑うだけで言わなかった。
この大人の対応を褒めて欲しいものだが、子供は此方の心の内を読んだようだ。
「おめえらには餅やらねえからな!」
此処で機嫌を損ねると久しぶりに顔を見に来た甲斐が無い。
「働くから食わせてくれよ、クロウ」



子供、いや恋人と一緒に餅つきを楽しむべく、鬼柳は椅子から立ち上がった。





 


END





京クロ
お正月ポッポタイムに遊びに来た鬼柳
サテライトでも杵と臼くらい知ってるかなとは思うけど(^^ゞ
でも私も実物は見たことないしね







2013.01.05

 

 

>戻る