■炬燵と飴玉(京クロ)■ 駄目社会人京介×保育士クロたんのシリーズ 茜色の夕暮れの墓標の黒羽陽樹さんへ相互記念のお礼として捧げます 今までの話はこちら >メンド臭い餓鬼
もう春だというのに、なかなか暖かくならない。
暖かくなったと思ったら、冬に逆戻りしたかのように寒くなったりしている。 そんなわけで暖房器具は必需品で、未だ炬燵が出しっぱなしのままだ。 狭い部屋だから、早いところ片付けたい、というのが本音なのだが、人一倍寒がりの男が毎日のようにやって来て炬燵を占拠しているのだから仕方ない。 炬燵に潜り込んで、その寒がり男、京介が言った。 「アイスが食べたい」 どうやらこの男の頭の中には春が来ていたようである。 「お前は阿呆か。この寒いのに」 自分も炬燵に入り込んで、無駄に長い脚をげしげし蹴ってやった。 「寒い時にあったかい部屋でアイス食べるのが至福なんじゃんよ」 「なんだその贅沢な理屈は」 クロウはもう一度足を蹴ってやった。 うわん、と泣き真似をして京介がじたばた暴れる。 自分のことは棚にあげて、炬燵で暴れんな、と言ってまた蹴った。 「アイスー!無いの?クロウ」 本当に、ウチの保育園の餓鬼共の方がよっぽど聞きわけがいい。 こんなでかい図体して子供よりも始末が悪い。 しかし、でかい餓鬼の我儘を聞いてやる気はないので、クロウは冷たく言った。 「ガリガリくんしかねえ」 「ガリガリくんって気分じゃねえ。寒い」 まあそうだろう。ガリガリくんは氷菓だ。 一般に気温が30度を超えると氷菓の方が売れるらしい。 つまりそれ以下の温度の時は氷系よりもアイスクリーム、というわけだ。 しかも冷凍庫に残っているのは、去年の夏買って置いて、うっかり食べ忘れてた奴だ。 アイスに賞味期限はないとはいえ、喜んで食べたいものでもないだろう。 「じゃあ自分で買ってこい」 「えええー」 寒がりの我儘糞餓鬼は盛大にブーイングした。 其れは嫌らしい。 「オレは買ってきてやんねえからな」 ぴしゃり、と言い放つと、京介は炬燵の天板の上に突っ伏した。 うにうにと唸っている。 本当に面倒くさい男だ。 「ほれ、飴やっから此れで我慢しろって」 常備してある飴玉を取り出すと京介は天板に懐いたまま顔だけ此方に向けた。 「あーん」 「あーん、じゃねえよ」 べち、と叩いてやると、京介はまた大袈裟にぎゃあと騒いだ。 「コイビトにあーんってして貰うのって浪漫だろ?!」 ああもう、至福だの浪漫だの、本当に五月蠅い奴だ。 放っておくと何時までも五月蠅いので、クロウはひとつ溜息をつくと、飴の包み紙を開いた。 五月蠅いからだ、仕方ない。 自分にそう言い訳しながら、甘やかしているという自覚はあるのだ。 甘やかすとつけあがるとわかっているのに。 飴を口に押し込んだら、案の定ついでに指も舐めてきたので、もう一回叩いてやった。 END
現ぱろ・京クロ 炬燵でいちゃいちゃ。 ぱなっぷのCMが美味しそうでさー ちょっと暖かいと食べたくなる。 相互記念のお礼に捧げます。 こんなでよかったらお持ち帰りくださいませ
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