■染めてやる(京クロ)■ 駄目社会人京介×保育士クロたんのシリーズ マーサに京介を紹介するために連れてきました 今までの話はこちら >愛の奇跡
「んじゃ、オレ出掛けるけど」
玄関先でクロウが言った。 わかってる。 昨日の夜から、明日は午後から出掛けるからと、それはそれは何度も繰り返し言われたし、だから一回で我慢したんだし。 せっかく久しぶりに休みが重なった土曜日、ベッドの中で一緒にのんびりぐだぐだしたかったけど仕方ない。 出掛けられないほどイタシてしまったら、一週間は確実に口きいて貰えないしな。 しかし、正直一人の休みほどつまらないものはない。 クロウが出掛けたら不貞寝してしまおう。 「うん」 表面上は愛想良く、行ってらっしゃいと続けようとして、クロウの言葉に慌てて立ち上がる。 「付いてきてもつまんねーかも知れねえけど、お前も一緒に来るか?」 「・・・行くっ!!」 * 休みの日に時々何処かへ行っているのは知っていたけれど、誘って貰ったのは初めてだった。 電車を乗り継いで、やってきた其処は古い教会の様な建物が建っていた。 しかし入り口に掲げられた標識を見れば、教会で無いことは一目瞭然だった。 クロウから、施設で育った、と言う話は聞いていた。 詳しいことは聞いていないけれど、多分此処がその施設なのだろう。 門を潜ると、庭に居た子供の一人がすぐにこちらに気が付いた。 「クロウ兄ちゃんだ!」 その声に他の子供たちもわらわらと集まってくる。 「クロウ兄ちゃん!」 「ピアノ弾いてー」 「今日誰から?」 「ねえ、此処のトコ上手く弾けないのクロウ兄ちゃん」 「わかったわかった、順番な」 ぐるりと取り囲んで口々に訴える子供たちの頭を撫でてやりながら、クロウはそう言うが、なかなかその場は収まらない。 其処へ、パンパン、と手を打つ音がした。 「ほら、アンタたち、皆でわあわあ言ったらクロウだって困るだろ。順番だよ順番」 「はあーい」 建物から出てきた、女性の声に、子供たちは大きな返事をして、ようやくクロウから離れる。 幾つくらいだろう、40代〜50代前半と言ったところだろうか。 肌の色は浅黒く、髪も黒く縮れている。 女性はクロウを見て、ニッと笑った。 こういう笑い方、何処かで見たことがある。 すぐにそれは目の前のクロウの笑い方だと気が付いた。 女性はクロウに向かって手を広げた。 「おかえり、クロウ」 「ただいまマーサ」 ぎゅう、とハグして背中を叩く。 其れから此方に気が付いたようだった。 「おや、其方は?」 「ああ、」 クロウが返事をする前に、マーサと呼ばれた女性はわかった!とでも言う様にパン、と手を打った。 「ああこれが噂の『鬼柳京介』さんだね!まあ、話に聞いた通り、イイ男じゃないか」 バンバン背中を叩かれて困惑する。 「はあ・・どうも」 顔だけはいいんだよコイツ、と言いながらクロウはマーサを京介に紹介した。
現ぱろ・京クロ マーサに京介を紹介するために連れてきました 実母がやってた施設の子にボランティアでピアノを教えるってことをクロたんもやってます ジャックと遊星たんも此処には顔を出すので マーサは京介のコト話だけは知っていたのでした オレ色に染めてやるって受の台詞じゃねえよってハナシですが(^^ゞ まあクロたんのが漢前なので。
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