■クリスマスの夜(京クロ)■ 駄目社会人京介×保育士クロたんのシリーズ サンタの話。 今までの話はこちら >大人になったらわかるよって言われた
毎日のように人の部屋にやって来ている癖に、クリスマスに用があると告げると意外なほどあっさりと、わかったと頷いた。 その様子は何処かホッとしているようにも見えた。 クリスマスを避けている、ような。 そうしてクリスマス前後は姿も見せなかった。 多分、クリスマスに対していい思い出が無いのだろうと思っていた。 だから、イブのその日、仕事を終えて急いでマーサハウスへやってきたクロウは、其処に京介が居たことに吃驚した。 「何で居んの」 「遊星に聞いたらクリスマスはいつも此処でサンタさんだって言うから」 忙しい筈の幼馴染達は、それでも都合を付けて顔を出している。 京介だって年末で其れなりに忙しい筈だ。 「ルドガーに早く帰してくれって頼んだ。その代わり来週は仕事納めまで残業かもしんねえけどな」 そう言って京介は笑った。 クロウも笑いながら言った。 「大丈夫かよ」 「平気、平気。ほら子供が待ってるぜ、サンタさん」 その笑顔は何時もと一緒だったから嬉しかった。 クロウがピアノを弾き、クリスマスソングを皆で歌う。 それからケーキやささやかなご馳走を食べて、その後皆でゲームなどして過ごし、クリスマスパーティはお開きとなった。 尤も大人たちはこれからが仕事の本番で、サンタを見るのだと何時までも起きている子供の眼を避けて知恵を絞らなくてはならない。 此れがなかなか大変な仕事なのだが、意外に楽しい。 ようやくすべての子供の枕元にプレゼントを置いて帰る頃には終電も近くなっていた。 タクシーで帰るジャック達が、一緒にどうだ、と誘ってくれたが、クロウは其れを断った。 歩いて、ゆっくり帰りたかった。 ゆっくり話がしたかった。 話したくないのなら話さなくていいと思っていた。 でも、せっかく一緒に暮らしだしたのだ。 もっと、京介のことを知りたい。 京介も同じように思ったからこそ此処に来てくれたのではないのか。 「今日は、来てくれて嬉しかった」 駅まで並んで歩きながら素直にクロウは言った。 クリスマスだけではない、子供も苦手なのだと思っていたから、来てくれたのが嬉しかった。 苦手、というか扱い方を知らないと言った方が近いかもしれない。 「クリスマス、嫌いなのかと思ってたぜ」 クロウの言葉に京介は頷く。 「うん、嫌いだった。・・でも今日は楽しかった」 「そっか、よかった」 楽しかった、という言葉に嘘はなくてクロウはほっとする。 「あそこの子供はみんなサンタを信じてんだな」 何処か感心したように京介が言う。 クロウは、オレも信じてた、と答えた。 「オレは、親を亡くしてからあそこで育ったけど、マーサや遊星やジャック達のおかげで随分長い事サンタを信じてられたんだ」 それって結構幸せなことだと思う。 親の居ない子供が、サンタを信じていられるなんて。 「だから、あいつ等にもまだ当分サンタが居るって信じさせてやりてえんだ」 ちょっと羨ましいな、と京介は言った。 「・・・オレは、サンタなんて居ないって思ってた。・・いや思いたかった、かな」 クロウは京介の横で次の言葉を待つ。 「オレを生んだヒトは、放任主義っていうと聞こえはいいけど、まあ実質子供のことなんか放りっぱなしで何にも世話を焼かないヒトでさ」 立ち止まった京介をクロウも立ち止まって見上げた。 「だから、オレの所にサンタが来ないのはオレが悪い子だからじゃなくて、サンタなんて本当は居ないからだって思いたかった」 クリスマスが来るたびに苦痛だった、と京介は言う。 だからクリスマスと言うと引き籠っていたのだと。 その頬に手を伸ばして、両手で包んでいた。 京介は何でもない事の様に笑う。 その顔の表面に張り付いた笑顔が、気に入らなかった。 両手に力を込めて、そのまま引き寄せる。 ごつん!と鈍い音がした。 「いったー!!!頭突き?!今此処で頭突き!?」 頭を押さえてぎゃあぎゃあと喚く京介を置いて、2,3歩先へ行く。 其処でくるりと振り返った。 「ばああか!!」
現ぱろ・京クロ 大人になったらサンタさんは恋人のことだって マツトウヤさんも言ってるよ!ってハナシでした。 念を押しても帰ったら結局スル(笑) この人たち路上でいちゃいちゃしてるんですよ・・マジバカップル(笑) 京介の過去は一応決めてはいるので もう少し詳しく書こうかなと思ったのですが つい逃げてしまった(^^ゞ
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