■報告(京クロ)■ 京クロ・現ぱろ駄目社会人京介×保育士クロウたん。 ジャ遊夫婦に引越し予定を報告です。
「クロウ」
店内に入るとすぐ、奥で遊星が手を上げているのが見えた。 「おっす」 久しぶりにランチでも一緒にどうか、と遊星に誘われ、やってきたイタリア料理の店は、落ち着いた雰囲気でカンジが良かった。 ランチタイムで値段もお手頃だ。 遊星と同じパスタセットを頼んで、料理が来るまでの間しばし雑談する。 「あ、そうだ」 クロウが言った。 「オレ、近々引っ越しするから」 遊星はクロウの顔を見て、如何にも残念そうに長い溜息をついた。 「何で溜息つくんだよ」 その様子に不満気にクロウが文句を言う。 「・・とうとう諦めたのか」 「は?何が」 「鬼柳を自宅へ帰すのを諦めて、一緒に暮らすために広い部屋に引っ越すんだろう」 図星をつかれてクロウは、うっ、と詰まった。 さすが幼馴染、付き合いが長い分、お見通しだ。 それでもクロウは抵抗を試みる。 「別に諦めたわけじゃねえよ。そろそろもう少し広いトコ越したいなって思ってたし・・」 ごにょごにょと言い訳を探していると遊星がさらに言った。 「諦めたんじゃなかったら絆されたんだろう」 「それも違うっつーの!」 そうは言ってみるものの、その表現はかなり近い気がする。 「ジャックにも言っておいてくれよ」 そう言うと遊星は言った。 「今日、ジャックも後から来ると言っていた」 「ええー・・あいつ来るとうっさいんだよなぁ・・」 クロウが運ばれてきたパスタをフォークでくるくるやりながらブチブチ言う。 「何だその不満そうないい草は」 クロウの頭上から不機嫌な声が降ってきた。 「ジャック、遅かったな」 何事もなかったかのように遊星はそう言いながらパスタを口へ運ぶ。 「少し打ち合わせに手間取った」 言いながらジャックは遊星の隣へと陣取った。 同じパスタセットを注文した後、ジャックはクロウに向き直った。 「誰が五月蠅いだと?」 「「ジャック」」 遊星とクロウの声がハモる。 「貴様ら!」 「だいたいさーお前は目立つんだよ。その上喋るしー」 フォークでジャックを指すようにして弄びながらクロウが言う。 今だって店内に居る女性客のほとんどはジャックを見ていた。 遊星はこの奇抜な髪形の割にそう目立ったりはしないのに、ジャックは何処に居てもかなり目立つ。 とにかく目立つ。 本人も目立つことが好きだから仕方ないのかもしれないが。 「もちっと静かに出来ねぇのかよー」 「貴様に言われたくないわ!」 からかう様なクロウの口調にジャックがそう返した所で、遊星がぼそりと言った。 「でも今日はジャックが奢ってくれるそうだ」 「え、マジ?!ジャック様様!」 「調子が良すぎるぞ貴様」 ころりと態度を変えたクロウにジャックはことさら渋面を作ってみせる。 だが口とは裏腹に別に怒っている様子は無い。 ジャックもまた付き合いが長いのだ。 「そうだジャック。クロウは引っ越し予定だそうだ」 遊星のその報告に、ジャックは嬉しそうに言った。 「そうか、とうとうあの馬鹿と別れることにしたのか」 「違う、逆だ」 「・・何だ、とうとう諦めたのか」 ジャックは先ほどの遊星のように、さも残念そうに長く溜息をついて見せた。 「諦めたんじゃねーっつの!」 「じゃあ絆されたのだろう」 「・・何でおめーらおんなじこと言う訳?」 諦めたも、絆されたも、かなり近いが、違うのだ。 しかしその感情を口で言うのは難しい。 どう言ったものかとクロウがもごもごとパスタを咀嚼していると、空気を読まない声が飛んできた。 「あれ、クロウ!」 見なくても聞きなれたその声が誰のものかわかる。 「・・・何でいんだよお前」 タイミング悪ぅ、と顔を顰めるクロウと対照的に京介は超ウキウキと勝手に隣に腰掛けた。 オレってスゴイ、とさも自慢げに言う。 「クロウの匂いがしたから」 「キモイ」 クロウは冷たくそれに返した。 「ひでえ!愛の力なのに!!」 「匂いとか言うな。キモイ」 「というか、勝手に其処に座るな!」 クロウと京介の言い合いに、ジャックの怒鳴り声が割って入る。 「えーいいじゃん。オレも昼飯食うために来たんだからさー」 「・・・そういやこの近くだっけお前の会社」 「そ。この店入ったのは偶然だけどな。いや必然か?やっぱ愛の運命かな!」 「言ってろ」 相手をするのが面倒になってクロウはパスタに集中することにした。 こうなってはどうあっても此処で食べていくだろう。 「まったく」 ジャックはまた溜息をついた。 「こいつの何処がいいのかオレにはさっぱりわからん」 その言い方がなんだか少し気に触ってクロウは口を尖らせた。 何処がいい、とかそんなこと。 「別にジャックにわかんなくったっていい」 「オレがわかってればいいんだ」 口で説明出来なくたって、そんなの構わない。 言わないけど自分でわかってる。 「クロウ!!」 がばり、と京介が抱きついて来て、クロウは皿をひっくり返しそうになった。 京介が居るこの場で言うべきことではなかったかもしれない。 クロウは激しく後悔した。 この張り付いた面倒な男はこうなったらなかなか剥がれない。 それでも抵抗を試みていると、もくもくと食べていた遊星がフォークを置いて言った。 「クロウが鬼柳を好きならそれでいい」 「お母さんありがとうございます!」 京介が喜々として叫ぶ。 「誰がお母さんだよ!」 突っ込んで頭を引っ叩いてやるが、もちろんそんなことでは京介はへこたれない。 離れない。 「だが」 お母さんと呼ばれた遊星は徐に言った。 「クロウを泣かせるようなことがあれば・・・」 其処でしばし考えるように言葉を溜める。 「新郎新婦が乗る車に何故か付いている、空き缶の気持ちを嫌というほどわからせてやる」 ああ車の後ろに何故かぶら下げてあるガラガラうっさいアレな。 つか目がマジでこええよ遊星! 普段はそう五月蠅いわけではないが、怒らせるとかなり怖いのが遊星だ。 敵に回したくない。 京介もそう思ったのかかなり大人しくなり、ランチタイムは恙無く終了したのだった。 END 現ぱろ とりあえずお引っ越し予定をお父さんとお母さんにご報告(笑) 幼馴染でクロウたんを溺愛しておりますよ。 ウチのジャ遊夫婦はまあ大抵そうなんだけども。 京介もちゃっかりジャックに奢ってもらいました(笑) ジャックの職業何にしようかなぁと考えていて なんか普通に会社員とか超にあわね!と思ったので とりあえず芸能人・・とか思ったんですけども そんなことは話の中に全然出てこないのであった(笑)
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