■林檎(牛遊)■
牛遊
牛尾さんをお見舞い
「思ったより酷くなくてよかった」
と思ったら、翌週もうピンピンしてた(^^ゞベッドサイドで林檎を剥きながら遊星が言った。 「まあ元が頑丈だしなぁ」 包帯の巻かれた腕を見ながら牛尾は答える。 「つか、遊星。ゴーストはかなりヤバいぞ」 「ああ、わかってる」 手元から目を離さずに遊星は返事をした。 明らかに林檎の方に集中している。 真面目に聞いているのか怪しいところだ。 牛尾は一応念を押した。 「危ねえから余計なちょっかい出すなよ?」 ゴースト退治を遊星たちに手伝わせようとしたくせに、勝手なことを言っていると自分でも思った。 だが、実際決闘してみて、わかった。 アイツはヤバい。 ライディングデュエルを楽しもうとか、そう言うことは全く考えていないし、相手が死のうが知ったこっちゃない、くらいに思っている。 牛尾の言葉に遊星は顔を上げた。 「・・・・・・・・・・・わかった。努力する」 「ちょ、待てこら」 遊星の返答に牛尾が突っ込む。 「何だ今の間は。しかも『努力する』ってなんだおい」 「林檎が剥けたぞ」 「誤魔化すな。お前さてはもう既に首突っ込んでやがんな?!」 牛尾の問いに答えずに遊星は林檎の乗った皿を突き出した。 「嫌いか、林檎」 「嫌いじゃねえけど、・・・ってなんでウサギなんだよ」 皿の上に並べられた林檎は、皮の部分がウサギの耳のように可愛らしく切られている。 器用なことはわかっているが、其れが発揮されるのは主に機械いじりに関してて、その他は割と大雑把なくせに、何故わざわざウサギさんなのか。 遊星は何故其処を突っ込んでくるのかわからない、と言った風に首を傾げた。 爪楊枝でひとつ刺して牛尾へ向ける。 「ラリーは喜んだぞ」 「あのな」 そりゃ子供は喜ぶだろうよ、可愛いもんな! しかし牛尾はもういい歳の立派な大人である。 可愛い彼女が切ってくれて『あーん』とかやってくれている林檎だとでもいうのなら、ウサギさんでも喜んだかもしれないが、同性の、しかも無口な糞餓鬼相手ではさすがに手離しで喜べない。 牛尾の様子をどうとったのか、遊星はさらに言った。 「クロウも喜んでくれた」 牛尾は本気で頭が痛くなってきた。 牛尾に言わせれば、ラリー・ドーソンだってクロウだって同じ『餓鬼』というカテゴリで括られる子供だ。 その子供らと同じ扱いでウサギさんでは頭痛がしても仕方ないと思う。 しかし遊星はウサギの何が気に入らないのか本気でわからないようだった。 林檎を差し出したまま、じっと此方を見ている。 牛尾はため息をついた。 まあ悪気はないのだ。 ウサギさんにしたのも、多分、喜ぶと思ったからなのだろう。 ラリーやクロウは喜んでくれた、だから。 遊星は牛尾のことを喜ばせようと思ってくれたのだ。 牛尾はその気持ちは受け取っておくべきだろうと判断した。 思えば出会いは最悪だったというのに、自分たちの関係も大分変ったものだ。 こんな風に好意を向けられるようになるとは思ってもみなかった。 「おーっす、牛尾生きてっかー」 牛尾が林檎を食べようと、口を開けたところでクロウが遠慮も何もなく入ってきた。 入ってきたはいいが、牛尾と遊星を見て立ち止まる。 「あ、わり。お邪魔だったかー?」 言われて自分の姿を省みれば、まさに『あ〜んv』という状態で。 「っ違う!!!」 けらけらと笑うクロウは、勿論冗談で言ったのだろう。 それなのに過剰に反応した自分に、ますます頭が痛くなった。 END 牛遊 牛尾さんが入院してる間に お見舞いでリンゴのウサギさんは書いておくべきだと思った(^−^) 牛尾さん回復力ありすぎだろ。
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