■仕方ない(牛遊)■
牛遊
クロたんが鳥食べられなかったら可愛いな という妄想から
仕事が一段落して、ようやく時計を見る。
昼の時間はもうとうに過ぎていた。 課長補佐という仕事もなかなか忙しい。 飯でも食ってくるか、と腰を上げる。 一段落した、とは言ってもまだまだ仕事は残っているわけで、手早く食べられる物、近場で済ませられる物、さらに今食べたい物を照らし合わせて、何が一番条件に合っているか考えつつ歩いていると、向こうから良く知った顔が歩いてきた。 「遊星じゃねえか」 「牛尾」 遊星は大きな買い物袋を両手に下げていた。 「買い物か?」 たいてい部屋に籠りきりでエンジンの開発に時間を割いている遊星がこんな所に居るなんて珍しい。 そう思って聞くと、遊星は言った。 「タイムセールに行ってきた」 成程、袋の中には野菜や肉などが入っている。 どれも割引のシールが付いていた。 「宅配の仕事で自分はいけないから、悪いが買ってきてくれとクロウが」 「主婦かあいつは」 思わず突っ込む。 しかしこの3人の中では一番経済観念がしっかりしていそうだ。 財布の紐を握っているのはクロウなのだろう。 「牛尾はこんな所で何をしているんだ」 遊星が言った。 言外に、公務員は仕事しろよ、と滲ませている。 「忙しかったんだよ、これから飯だ。お前は飯食ったのか?」 「・・いや、まだだ」 遊星の方も忙しかったらしい。 というか、大方機械弄りに熱中して、頼まれたタイムセールの時間になってしまい、昼食を取る暇もなく出てきた、という処だろう。 「じゃあ丁度いいから付き合え」 牛尾は遊星の手から一つ袋を取りあげた。 牛尾から見れば、ジャックはタッパがあるからまだいいとしても、遊星とクロウはどうにもチビな上にヒョロヒョロしている印象だ。 機会さえあれば、何か食べさせてやりたいのである。 少し歩くと、良い匂いが漂ってきたので、その店の前で足を止める。 「此処でいいか?」 「食べたことがない」 遊星は牛尾と店の看板を見比べてそう言った。 「結構美味いぞ。イヤか?」 「・・・良い匂いだな」 遊星のその一言で、本日の遅いランチは、フランチャイズのチキン屋に決定した。 適当にセットを頼んで、席に付き、食べ始める。 「まあまあだろ」 問うと遊星はこくりと頷いた。 「美味いな」 本当に美味しそうに咀嚼している。 気に入ったようだ。 「クロウとジャックにも、土産で買って帰るか?」 そんなに値の張る食べ物でもないし、と思って牛尾は訊ねた。 食べ盛りの若者集団だ、食事前にチキンの一本や二本、平らげることは雑作もないだろう。 遊星が食べたことないのならば、シティで暮らした経験のあるジャックはともかく、クロウも食べたことがないのではないか。 此処のチキンが結構好きな牛尾は、此れをクロウにも食べさせてやりたいと思った。 遊星だけに奢ったのでは、一人だけ依怙贔屓をしているようで、なんだか落ち着かない、というのもある。 遊星は首を横に振った。 「クロウは鳥を食べられない」 「・・そうなんか」 食べたことがない、と言ったのは、仲間内に食べられない奴が居たためだったらしい。 仲の良いこいつ等のことだ、それなら食卓に上らないのも頷ける。 クロウは鳥が好きで、よく餌をやったりしている。 鳥の方も餌をくれる人間がわかるのか、懐いているかの様に見える。 仲間だと、思っているのかもしれない。 黒烏宅急便屋のへたくそなロゴを思い浮かべて牛尾はそう思った。 「まあ共食いみたいなカンジだしな」 「すまない」 今後差し入れには鳥系の食べモノは避けることにしよう。 しかし遊星は大変美味しそうに鶏肉のハンバーガーをもふもふと食べている。 夢中で食べているその顔は10代の少年らしくて何だか可愛らしい。 仕方ない、二人きりの時だけ奢ってやることにしよう。 こっそりそう思った。 END 牛遊 二人きりで会ってたらデートじゃねえか(笑) クロウたんが鳥食べられなかったら可愛いな、と思ったんだけど まあフツーに食べそうな気もするわ〜(^^ゞ 牛尾さんがジャックのことは基本的にどうでもいいのは 狭霧さんとのアレのせいですよ(^^ゞ
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