■頼れ(牛遊)■
牛遊
無料配布本 ゴースト戦とナスカ行きの間くらい
「昼飯まだだろ、差し入れだ」
勝手知ったるナントヤラ、とばかりに地下部分のガレージへ直接顔をだした牛尾は、両手にぶら下げていた袋を遊星の方へ突き出した。 マーサがタダより怖いものは無いと言っていた、などと遊星が言いだす前に付け加える。 「ゴースト軍団退治も結局手伝って貰ったしな」 本来ならばそれは、セキュリティの仕事だ。 一般市民を頼っていいものではない。 だが、遊星は一度ゴーストと対峙しているし、偽ジャックも同じ機械だったことを考えると、あれも多分ゴーストの亜種だったのだろう。 そう考えるとジャックも対戦経験者ということになる。 結果、協力してくれると言ってくれたのをいいことに頼ってしまったわけだ。 しかしやはりいい大人が子供に頼りきりというのも抵抗がある。 という訳で、礼くらいはしなくては、とささやかながら土産を持参したわけだ。 「ゴーストを操っていた奴はイリアステルだと名乗った。シグナーである以上、奴らとの争いはたぶん避けて通れない道だ」 だから礼には及ばない。 牛尾の心の中など知らぬ気に遊星はそう言った。 シグナー。 確かに、ダークシグナーとの戦いを見ても、シグナー達は選ばれた者たちなのだと思う。 だけど、普段はただの、10代の若者なのだ。 大人として、出来ることはなるべくしてやりたい。 大人をもっと頼っていいんだ、自分達だけで何もかもやらなくてもいいんだ、と言ってやりたい。 特に遊星は、何もかも背負いこもうとする傾向が強い。 そんなにひとりで背負えるわけねえだろが、少し持ってやるからその荷物をこっちへ寄越せ、と言いたい。 「ま、そうかも知んねえけどよ。も少し頼れる大人になりたいつーかな」 頼りにされたい、のだ。 牛尾の言葉に遊星は疑問符を頭上に浮かべた。 「お、牛尾じゃん。何、食っていいの?」 その意味を問おうと口を開いたところでクロウが降りてきた。 作業机に並べられた食料を前に嬉しそうだ。 ブルーノやジャックも下に降りてきて、差し入れで昼食会となった。 * 遊星も皆と並んで玉子焼きを口へ運びながら、先ほどの言葉の意味を考える。 サンドウィッチをもごもごと頬張りながらクロウが訊いてきた。 「どしたんだよ?遊星」 「・・・牛尾が頼れる大人になりたいと言っていた」 「んだそれ?まあ確かに頼りねえときもあるけどな」 クロウは言って、ケラケラと笑う。 「でも牛尾が居てくれるから情報も貰えるし、余計なこと押し付けられる時もあっけど、アイツ顔広いから結構自由に出来るし」 「それに、アイツ、気が利くよな」 「気が利く?」 訊ね返すと、年上相手に気が利くっつー言い方も失礼かもしんねーけどなぁ、と前置きしてクロウは言った。 「この弁当屋、宅配手伝ったことあんだけど、普段こういうサンドウィッチとか扱ってないんだよ。ご飯モノの弁当がメインだから。注文しないと作ってくんねーの。オレが片手しか使えねえと思ってわざわざ頼んで作って貰ってくれた、っつーことだろ?」 確かにサンドウィッチは手軽に食べられるようにという用途で考案された食べ物だ。 なるほど、と遊星は頷いた。 クロウがしみじみと言う。 「最初はセキュリティなんて、と思ったけど、意外にいい奴だよな」 「そうだな」 出会いはかなり印象が悪かったことを思い出して、遊星は少し笑った。 クロウはちょっと考えて付け足す。 「頼って欲しい、っつーてんだから、なんか頼み事してみればいいんじゃね?」 * 「牛尾」 粗方食べ終わった後、遊星は言った。 「ひとつ、頼まれてほしいことがあるんだが、構わないか?」 「なんだ?」 唐突とも言える遊星の言葉に牛尾は訊ね返す。 「明日、特売日なんだ。お一人様一点のインスタントコーヒーを買いだめしたい。付き合ってくれ」 牛尾はがっくりと肩を落とした。 「あのなぁ・・」 「駄目か?」 そういうことじゃないんだよ、と言いたいのは山々だが、こんな風に小首を傾げられては、此方が折れるしかない。 牛尾は長い溜息をついた。 「わかった、付き合ってやるよ」 「ありがとう」 「良かったね遊星。此れでお一人様一点の飲むゼリーも沢山買えるね」 空気を読めないブルーノのはしゃいだ声に、牛尾の溜息は益々深くなった。
牛遊 超満足で無料配布で配ったヤツです。 そういう「頼って欲しい」じゃないんだよー(笑) しかしやっぱ牛尾さん好きだわ。 牛遊は今後も布教していきたいです。仲間募集中!
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