「遊星、居るか」
勝手知ったるとばかりにガレージに入って来た人物を見て遊星は少し笑った。
「牛尾」
牛尾も呆れたように笑う。
「お前は仕事してるか機械弄ってるかどっちかだなホント」
ちゃんと休養取れよ、寝不足で倒れたなんていったらオレが他の連中にどやされるだろ。
小言を言いながら牛尾は持っていた袋を押し付ける。
覗くと中には軽食とチキンが入っていた。
「ああ、クリスマスなのか」
これだよ、と牛尾は長い溜息をついて見せる。
「ホントにお前仕事のし過ぎだぞ。ちゃんと寝ろよ、三食食えよ」
誰も居ないからって機械ばっか弄ってるんじゃねえ。
遊星はまた笑う。
「誰か居てくれればいいんだけどな」
そうやって毎日怒ってくれる誰かが。
***
牛遊
逆プロポーズ的な。
牛遊でお題を〆る私勇者
恋するカレンダー12題
エバーグリーン約束しましょう
12.12.22
ああ、今日も雨か。
研究所の中に籠って居ると外の天気などわからない。
情報を仕入れるために時々覗くネットで今日の天気を知ったりする。
夢中になると他のことをすぐ忘れる、とよく幼馴染に怒られたものだ。
その幼馴染も今は遠くの空の下、元気に頑張っているようだ。
便りの無いのは元気な知らせとは言うが、頑張っている、そんな噂もネットで知ったりする。
キーボードを操作していた遊星はメールの中に見知った名前を見つけた。
『遊星、仕事ばっかしてねえでたまにはデュエルでもしようぜ』
そう言えばこの男は一時期幼馴染の上司でもあった。
意外に面倒見が良いという点で馬があったらしく仲良くやっていたように思う。
多分此処に残る自分を心配して幼馴染が何やら言付て行ったのだろう。
また寝てないようなら寝ろと怒ってやってくれとでも言って行ったのだろう。
ああこんな処でちゃんと自分は外と繋がっている。
遊星は天気予報を調べ始めた。
次のライディングデュエル日和は何時だろう。
***
牛遊のような遊クロのような。
レイニーブルーの鐘の音
恋するカレンダー12題2
12.06.22
昔、マーサハウスに居た頃、遊星の髪型を蟹みたいだ、と言った奴がいた。
正直成程、と納得したもんだ。
でも今はアレはネコミミなんじゃないかと思っている。
人間の耳よりよっぽど良く聞こえる耳。
遊星は猫に似てる。
パソコンに向かっていた遊星がその手を止めて扉の方を見ている。
しばらくすると車が来てポッポタイムの前で停まった。
此処にDホイールじゃなく車でやってくる奴と言えば限られている。
「よお、居るか?」
「牛尾」
牛尾のおっさんはサテライト住民をクズクズ連呼するそりゃあもう物凄く嫌な奴だったそうだが、ダークシグナーとの戦いの中で考えを改めたのだそうだ。
年を取れば取るほど、自分の考えを改めて謝罪するって、特に年下の人間に対してそうするのって難しいと思うんだ。
牛尾のおっさんはその点根底の所でデキた人間だったってことなんだろう。
だからきっと遊星も今は。
「猫の尻尾がピンと伸びてる時ってご機嫌な時なんだってよ」
そう言ったら牛尾も遊星も何の話だって怪訝な顔をした。
***
遊星たんが牛尾さんと仲良しなのがちょっとつまんないクロたん、みたいな。
芽生える気持ち、若葉の憂鬱
12.05.25
恋するカレンダー12題 2
お題Fortune
Fate
「どうした遊星、すげえ荷物だな」
夕飯の惣菜でも買って帰ろうかと寄ったスーパーで遊星と鉢合せた。
「クリスマスパーティをしようということになって」
仕事の忙しさに忘れていたがそういえばクリスマスイブだ。
多分双子の片方がやろうと騒いだに違いない。
財布の紐を握っているクロウも子供には甘い。
とはいえサテライトではあまりクリスマスパーティというものには縁が無かったようで、何を用意したものかよくわからないらしい。
買い物カゴの中身は軽食やスナック菓子がほとんどだ。
「とりあえずケーキは要るだろ」
「…金が無い」
牛尾はうっと詰まった。
こっちをじっと見るな。
あの青い目で見つめられると何だか居心地が悪くなる。
牛尾はため息をついた。
「わかった、ケーキは買ってやる」
「すまない」
すまない、などと言いながら嬉しそうに微笑むので、なんだか益々居心地が悪くなるのだ。
***
手ぶらのぼくにプレゼント強要。
居心地が悪い=なんか照れ臭い、みたいな。
牛→←遊みたいな
11.12.23
「何だ牛尾か」
「なんだじゃねえよ。ご挨拶だなおい」
ポッポタイムの玄関を開けたら、下のガレージに居た遊星が此方を見上げてそう言った。
年長者に向かって全く失礼な言い草だが、此方の返答に笑う様は可愛らしい。
子供とはいえ、成人も近い男相手に可愛いという表現もどうかと思うが、生い立ちのせいか大人びた固い表情の多い遊星が柔かい顔で微笑むとどきり、とすることがある。
昔はもっと刺々しい雰囲気を持っていた。
全身で此方を嫌いだと言っていた。
そうだ、前は「何だお前か」と言われたのだった。
名前を覚える気もなかった。
自分が変わったのか
遊星が変わったのか
そんなことを考えている間に遊星は丁度休憩しようと思っていたんだ、などと言ってまた柔らかく微笑むのだ。
***
玄関開けたらあなたとはちあわせ。
最初の頃は仲良くなれるって思ってなかったよなぁ
11.02.15
恋するカレンダー12題 2
お題Fortune
Fate