■年相応(牛遊)■
牛遊
遊星たんを餌付けしたいシリーズ
玄関の鍵が開いているのにももう慣れた。
どうせまた大家が勝手に鍵を開けて中に入れたのだろう。 マーカー付きをもう少し警戒しても良さそうなものだが…、などと思いつつ扉を開ける。 案の定、其処に遊星が居た。 勝手に何やら物色して食材を取り出している。 何か作ってくれるつもりなのだろうけれど、言っておくが部屋の主は自分だ。 「来てたのか」 「ああ」 返事は基本的にそれで終わりだ。 無口と言うか口下手と言うか、お前沢山喋ると損だと思ってるんじゃあるまいな、と勘繰るほど、奴は喋らない。 此処はもう少し、何故来たのかとか、どうやって入ったのか、とか語る場面ではないだろうか。 育った環境がそうさせるのか、遊星は大人びて見える。 この位の年頃の子供はもう少し喧しい筈だ。 尤もそれにも慣れてしまったので、牛尾もさらっと流す。 部屋にマーカー付きの無愛想な少年が勝手に上がり込んでいる、という状況も気にならなくなりつつあるので、此方もいつも通りの行動を取る。 食事はまだ出来ていないようだし、先にシャワーを浴びたい。 「悪いがオレはひとっ風呂浴びてくるから」 「かまわない」 遊星はやっぱり簡潔にそう答えた。 人が風呂へ入っていようが何だろうが特に気にするような奴ではない。 さっとシャワーを浴びて出てきた牛尾は、がしがしとタオルで頭を拭きながら、いつもの習性で冷蔵庫から缶ビールを取り出した。 「あ」 遊星が其れを見て小さく声を上げる。 そう言えば、奴は未成年だった。 未成年の前で飲酒、と言うのも教育上宜しくないような気もする。 しかし缶を持った手は条件反射のようにプルタブを引いていた。 途端、中身が音を立てて噴出した。 「うっわ」 頭からかぶることは避けたものの、中身の殆どが零れてしまった。 勿体ない。 「すまない、さっき落としてしまった」 食材を探して掻き回している時に、床に落としたらしい。 「早く言えよお前は」 「すまない」 本当に悪気は無かったようだ。 遊星の視線がうろうろと彷徨う。 拭くものを探しているのだろう。 慌ててる様でちょっと珍しい。 缶をシンクに置いて、とりあえず何か拭くもの…と視線を彷徨わすが、布巾も雑巾も残念ながら不在だった。 そういえば昨日カップラーメンを零して拭いたのを洗ったんだった。 思い出して干してある筈、と取りに行こうとした牛尾は手に持ったタオルに気がついて止めた。 洗えばいいんだし、此れでいいか。 そう思って振り返ると、さっき置いた缶ビールに遊星が口を付けようとしている処だった。 缶の底に残ったビールを飲もうと思ったらしい。 「こら!この未成年が!!」 「っ!」 遠慮なく拳骨をくれてやる。 「…勿体ないだろう」 さすがサテライト育ちと言ったところか。 モノを大切にするその言い分は認めてやらないこともないが、未成年の飲酒を見逃すわけにはいかない。
牛遊 遊星たんに餌付けしようシリーズ(今付けた・笑) ビール飲もうとしてゲンコ貰う遊星たんでした(笑) もともと一期の頃、牛尾さん結構いい人じゃん仲良くなって欲しいなぁと思いつつ書いてた話たち何ですが コメントくださった方が居たので嬉しくてまた書いてみました。 ありがとうございました!
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