■拾った(牛遊)■
牛遊
大会前捏造。 牛尾さんが遊星たんを拾いました。
冷たい雨に打たれていたはずが、気が付くとベッドの上だった。
見覚えのない、知らない場所。 「お、気が付きやがったか」 向こうの部屋から顔を出した男が一瞬誰かわからずに反応が遅れた。 制服ではなかったためだ。 頬のキズでそれとわかった。 遊星を追い掛け回す、しつこいセキュリティの男。 名はなんと言ったか。 とにかく、此処は安全な場所とは言いがたい。 身体を起こそうとすると視界が回った。 「熱が出てるんだろ」 男は言った。 身体を起こすことを諦めて、遊星は訊ねる。 「・・・あんたが助けてくれたのか」 「別に助けたわけじゃねぇ、拾っただけだ」 面白くも無さそうに男は言った。 拾った。 気まぐれで拾ってきたのだろうか。 まるで犬かネコのように。 そしてすぐ捨てるのだ。 「目が覚めたなら食っとけ」 言われて何とか身体を起こす。 ベッドサイドの小さなテーブルに盆ごと置かれた小さな椀の中身は粥だった。 しかし食欲はない。 じっと眺めていると、男が言った。 「何だよ、別に毒なんか入ってねーぜ」 何か入っているかと疑っていると思ったらしい。 「・・何故拾った?」 「ああ?別に好きで拾ったわけじゃねーよ」 男は遊星の顔に指を突きつけた。 「いいか、お前をとっ捕まえるのは俺だ。絶対にお前をサテライトへ送り返してやるからな!」 なるほど、と遊星は思った。 治安維持局のものだと名乗った、あの小男の言葉が効いているらしい。 権力を振りかざすこの男は、さらに強い権力の前にはなす術もないと言うことだ。 遊星は粥を口へ運んだ。 味はわからないが、食べられる時には食べておいた方がいい。 「で、なんでてめーはあんなトコで寝てやがったんだ?」 「別に好きで寝てたわけじゃない」 男の言葉を真似るように遊星は答える。 「飛び出してきた犬を避けそこなって転んだ。かなり叩きつけられて動けなかっただけだ」 「其処へ雨が降ってきた、ってわけか。サテライトのクズらしい間抜けな理由だな」 は、と馬鹿にするように男は言った。 むっとして手が止まる。 「ほら、勿体ないだろ。食えるなら残すなよ。食べ物を粗末にするなっての」 「・・・・・」 思わず、男の顔を見上げる。 遊星の視線に気が付いた男は乱暴に言った。 「何だよ」 「・・・アンタがそんなことを言うとは思わなかった」 食べ物を粗末にするなとか言いだすなんて、予想外もいいところだ。 クズだの、ゴミだの。 サテライトの人間だというだけでそういう呼び方をするくせに。 遊星の言葉が気に入らなかったのか、男は言った。 「口の減らねぇ餓鬼だな。其れが目上に対する態度か。『アンタ』じゃねえ、『牛尾さん』だ」 「・・・牛尾」 そんな名だったのか。 「呼び捨てにするな、牛尾さん、だ!ほら、薬!飲んどけ」 遊星は牛尾に無理やり薬とコップを渡された。 「いらない」 「いらない、じぇねーよ。別に変な薬じゃねえっての。市販だけど漢方だぞ。効くぞ」 押し付けられた其れを仕方なく水で流し込む。 「・・苦い」 「味がわかるなら大丈夫だろ」 そう言ってふん、と笑った牛尾が、やっぱり意外で、どうしたらいいかわからなくなる。 不安なのは、熱のせいだと思った。 END 大会前の勝手な捏造。 牛尾さんは遊星たんを捕まえることを諦めていないと思います。 名前は多分名乗ってはいなかったんじゃないか、な・・・?といううろ覚えなんですけども 遊星たんは自分の興味のないことは覚えなそうだし 牛尾さんはサテライトのクズの名前を覚えていなさそうと思って(^^ゞ 多分続きます(^^ゞ
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