■可愛い(牛遊)■
牛遊
牛尾さんにラーメン奢ってもらったよ。
まだ帰りたくないと駄々を捏ねる龍亞を宥め賺して、双子を家まで送り届けた帰り、近道のつもりで遊星は細い路地へ入った。
大通りとは違って、此処は生活の匂いがする。 スピードを落としてラーメンの匂いのする道を抜けると、右手に小さな公園があった。 遊星はDホイールを止めた。 子供が何人か走り回っている。 シティでもサテライトでも、子供は何処に居たって元気だ。 「あ、おじちゃんだ!」 微笑ましい気持ちで遊星がラリーの事を思い出していると、一人の子供が叫んで走り出した。 他の子供も其れに倣う。 子供たちが走っていった先を視線で追うと、其処に何処かで見たような制服の男が立っていた。 「遊ぼうおじさん!」 「またデュエルしようよー」 男に纏わり付いて子供たちが口々に遊ぼうだのなんだの騒ぐ。 その子供をあしらって男は言った。 「おら、もう遅いからウチへ帰れ」 「えーまだ早いよ」 「早かねーよ。この時期すぐ日が落ちて真っ暗になっちまう。暗くなったら危ないだろうが」 確かにこの時期日が暮れるのは早くなっている。 それでも不満気な子供たちに男は仕方ないな、というように言った。 「また今度休みの時には遊んでやるから」 「ほんと!」 「約束だよおじちゃん!!」 ばいばい、と手を振って帰って行く子供たちに同じように手を振って見送った男はやれやれ、とため息をついた。 どうみても子供に懐かれるカンジではないのに。 子供たちと一緒に居る男と、自分の知っている男とのイメージがあまりにもかけ離れていて、本当に同一人物なのか疑わしい。 遊星がそのまま男を見ていると、向こうもこちらに気が付いた。 「・・・サテライトの糞餓鬼」 「・・・遊星だ」 やはり牛尾だった。 塵だの屑だの言われなかっただけマシだったが、さっきの子供たち相手の時とはあまりに違う反応にムッとする。 あんなヤツ、見てないでさっさと帰ればよかった。 会話するのをやめてDホイールをスタートさせようとした遊星を、牛尾の手が捕まえる。 「・・なんだ」 「・・ラーメン食べるから付き合え」 そういえばラーメンのいい匂いがずっとしていた。 「ひょろひょろしやがって。ちゃんと食ってるのかぁ?」 「食べてる」 連れて行かれたラーメン屋で牛尾は勝手にチャーシュー麺を大盛りでふたつ頼んだ。 特に不満はないが、何を食べるか聞いてくれてもいいと思う。 仏頂面の遊星をどうとったのか、牛尾は言った。 「心配しなくてもサテライトの貧乏人から金取ろうなんて思っちゃいね―よ」 いちいち言い方が引っかかるが遊星は黙っていた。 食べ物に罪はない。 「餃子も食うか?」 今度は聞かれたので頷いた。 牛尾が餃子も2枚追加で頼むと威勢の良い声が返ってきた。 この店はよく来るらしい。 運ばれてきたラーメンは美味しかった。 ややあって、遊星の器を覗いた牛尾が言った。 「何だ、チャーシュー嫌いだったのか?」 「いや」 遊星は其れに短く答える。 それで終わりそうな会話を牛尾が続けた。 丼の中を指して言う。 「残してるじゃねーか」 「これは」 「最後に食べるんだ」 牛尾がぶっと噴出した。 「好きなもんは大事に取っておくタイプか!!」 何が可笑しいのかさっぱりわからないが、かなりツボにハマったようでげらげらと笑い続ける。 ムッとしながらも遊星は取って置いたチャーシューを口に運んだ。 一頻り笑った後、牛尾は自分の丼のチャーシューを遊星のほうへ移して言った。 「やるよ。好きなんだろ?」 バシバシと遊星の頭を叩きながら、上機嫌で尚も笑う。 「小憎たらしい糞餓鬼だと思ってたが、可愛いとこも有るじゃないか、お前」 糞餓鬼じゃない、遊星だ。 よほど言い返してやろうかと思ったが、遊星は結局大人しくチャーシューを味わうことにした。 食べ物に罪はない。 END すっかり捏造モードで申し訳ない(^^ゞ 牛尾さん、部下(後輩?)には慕われてたカンジだし 面倒見はいいんじゃ無いかな、という妄想と 好きなものを大事に取って置いて最後に食べる遊星たんって可愛いくね? という妄想を 混ぜてみました(^_^) なんか私は遊星たんを 「食べ物くれる人いい人!」ってタイプだと思っているのかもしれない(^^ゞ
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