■あがる(牛遊)■

牛遊。
微妙にシリーズになってきてる捏造牛遊(^^ゞ











アパートの前にすっかり見慣れてしまった赤いDホイールが停まっていた。
持主は、というとその近くでスーパーのレジ袋を2つ下げて、所在無げに立っている。
途方にくれているようにも見えた。
一度拾ってきたことがあるから、牛尾のアパートを知っているのは、まあわかるとしても、いったい何をやっているのか。
「何やってるんだ、糞餓鬼」
てっとり早く本人に聞いてみる。
声をかけると遊星はレジ袋を二つとも牛尾の方へずい、と突き出した。
「お前にもお裾分けしておいてくれと言われた」
「お前じゃねぇ、『牛尾さん』だろう」
「ウシオサンにもお裾分け」
不満そうだが、きちんと言い直すのを確認して、袋の中を覗く。
どちらの袋にも山ほどじゃが芋が詰まっていた。
「誰に貰ったんだ芋なんて」
「名前は知らない」
「あ?お前知らない人に物貰っちゃいけねーって教わらなかったのか」
遊星はむっとした顔をした。
「名前は知らないが、此処の大家だと言っていた。荷物を運ぶのを手伝ったらくれた」
「ああ、成程な」
お喋りで世話好きな中年の大家の小母さんの顔を思い出して、牛尾は頷いた。
あの大家は田舎から送ってきたと言っては、店子たちに野菜をくれるのだ。
マーカー付に何の警戒心も持たないのもどうかと思うが、そう言えば何回かラーメン屋で一緒に居るところを見られていた。
そのせいもあるだろう。
牛尾が納得したところで遊星は再び2つの袋を突きだしてくる。
「半分はお前に、ってくれたんだろが」
ひとつだけ受け取ろうとしたが、遊星はもうひとつも持たせようとする。
「こんなに食べられない」
「オレだって芋ばっかりそんなに食えねーよ」
最も一人暮らしの後輩共に配ってしまうという手もあるのだが。
遊星だってセキュリティ保管庫へ忍び込んだ時に、協力者が居たはずだし、そいつに分けてやればいい。
しかし遊星がどうあっても袋を引く気がなさそうなので、牛尾は言った。
「食える分だけ持って帰れ」
「・・・お湯が沸かせる程度の卓上コンロしかない」
「・・・どんなトコに居るんだお前は」
卓上コンロなんて後輩共と鍋やるときくらいしか出さないぞ。
あれで調理をするのは不可能ではないが、ボンベでしか使えない奴だと結構面倒そうだ。
「レンジは?」
「ある」
どこをねぐらにしているのか知らないが、主にレトルトとインスタントで暮らすための部屋のように思えた。
ちゃんと飯食わないからひょろひょろしてやがるんだよ。
それなりに鍛えてはいるようだが、どうしても細いイメージしか持てない。
「じゃがいもは」
牛尾は言った。
「細く切って、油で揚げると美味いよな」
「たくさん揚げておいて、残ったら後でフライパンで炒めても美味い」
牛尾の言葉を受けて遊星が言った。
今はキッチンの無い部屋で暮らしているようだが、別に料理が出来ないというわけでもなさそうだ。
サテライトに居る頃は自炊していたのだろう。
牛尾は袋を二つとも受け取らずに、玄関の鍵を開けた。
「おい」
上り口で靴を脱ぎながら、背後を振り返って声をかける。
「お前まずジャガイモ洗って皮剥け」
料理できない所で暮らしてるなら、ウチの台所貸してやる。
調理した後は食べて行ってもいいし、持って帰ってもいい。
遊星は少しの間逡巡しているようだった。



どうするだろうか。
この間は牛尾が勝手に拾ってきたが、部屋の中は謂わば牛尾のテリトリー内、其処に自分の意志で入ってくるだろうか。



様子を見ていると、すぐに遊星は付いてきた。
特に害は無いと踏んだらしい。
牛尾は野良猫の餌付けに成功しつつあるような気分になりながら、ブーツを脱ごうとしている遊星からじゃがいもの袋を受け取った。




END





微妙にシリーズものっぽくなってる捏造牛遊(^^ゞ
通りすがりの野良猫に気まぐれで餌をあげてたら
ちょっと慣れてきて
家へきてご飯食べるようになりました☆
エサ場認定、みたいな(笑)

遊星たんが雑賀さんに借りてたお部屋は
台所なさそうだったので
勝手にそのようにいたしました(^^ゞ

次は炒飯の予定(食べ物予告)




2008.11.08

 

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