■「居心地がいいから」(十翔)■ 十翔。頭があったかいってハナシ。
ふわふわであったかくって
居心地がいいから ずっと側にいてくれたらいいな と思う。 「ちょっとアニキ、ボクの頭にあご乗せるのやめてって言ってるでしょ!」 デュエルの実習の時間、他のクラスメイトのデュエルを見ていた翔が騒いだ。 ばたばたと頭上に向かって追い払うように両手を振る。 「えーだってあったかいからさ」 翔の剣幕を他所に十代は後ろから翔に抱きついたまま離れようとしない。 身長が低いので、こういう体勢になった時に、丁度頭を乗せるのにいい場所に翔の頭が来るのだ。 むきー!と翔が暴れる。 「やめてよアニキ!これ以上背が縮んだらどうしてくれるんすか?!ボクはお兄さんみたいに背が高くなりたいんす!!」 一気に捲くし立てて肩で息をする翔に、小さい方が可愛いじゃん、という言葉を十代は飲み込んだ。 其れを言ったら翔がマジギレするのは目に見えている。 さすがに十代も空気を読んだ。 「いい加減にしろ、お前ら」 二人のやり取りを見ていた万丈目が呆れたように口を挟んできた。 渋々十代は頭だけは翔の上からどかす。 それでも腕は翔に回したままで離れようとしない。 「お前なー」 いい加減に離れろ、と繰り返す万丈目に、十代は言った。 「いいじゃんあったかくて引っ付いてると気持ちいいんだぜ」 頭上で交わされる会話を聞いていた翔が言った。 「・・・ボク、そんなに体温高いかなぁ?」 「いや、普通、頭は熱を放出しているから温かいものなんだ」 此処で子供は体温が高いからな、などと言ったら翔の機嫌が悪くなることは万丈目もわかっている。 いつもだったら別に気にもしないで言ってやるのだが、今は一応授業中だ。 騒ぎが大きくなるのは面倒だ。 「へえ、そうなんだ」 「髪の毛で熱の放出の微調整をしたりしてるがな」 「万丈目くんってすごいね」 「さすが物知りだな万丈目」 尊敬の眼差しで見られれば悪い気はしないらしく、万丈目はさらに続ける。 「だから髪の薄い人は冬場熱を放出しすぎて風邪をひいたりするし、夏場は熱を吸収しすぎて火傷のようになってしまったりする」 「そうなんだ」 「大変だな」 其処へ校長が声をかけてきた。 「楽しそうだね、3人とも」 この校長はデュエルが大好きで、時々こうやって出没する。 「あ、校長先生コンニチハー」 話題が話題だっただけに、愛想笑いで返す。 「何の話をしていたのかな?」 授業中だし、多分デュエルの話でもしていたと思ったのだろう。 しかし残念ながらデュエルの話ではなかったし、校長の頭を見れば言うわけにもいかない。 何とか誤魔化そうとする翔と万丈目を尻目に十代が口を開く。 「ハ」 「わあ!!!!」 翔が前から口を塞ぎ、万丈目が後頭部を殴りつけた。 「いってー!」 「やかましい!!」 そしてそのまま笑って誤魔化しつつ2人は十代を引きずるようにして遁走した。 「もうーなに考えてるんすかアニキー」 「十代キサマ、ハゲとかいう気だったろう。少しは空気を読め!」 「悪かったって。ほらオレ正直者だからさ」 謝りつつ、まふ、とまた翔の頭に自分の顎を乗せる。 「またー!」 自分にかかる重みを嫌がって翔が騒ぐ。 それを両手で封じて十代は言った。 「翔―お前はこのままもふもふでいてくれよー」 「オマエな」 それは本人の意思でどうにかなることじゃないだろ、と万丈目が突っ込み、翔がでもウチお父さんもお祖父ちゃんもハゲてないし大丈夫かも、と真顔で言う。 そんな話を聞いちゃいない十代は温かい翔の頭を堪能する。 「ふかふかで気持ちいい〜」 十代が本当に気持ち良さそうに翔に懐く。 「もうー寝ないでよアニキ重いってば〜」 あんまり幸せそうに言うものだから、翔はとうとう十代を頭上から追い払うのを諦めた。 ふわふわであったかくって 居心地がいいから ずっと此処に居られたらいいな と思う。 END
十翔 身長差的に後ろから抱きついたら 頭に顎を乗せると丁度いい感じかな、と(笑) 熱を頭から放出してるってハナシは テレビかどっかで聞いたような気がするんですが 裏づけとれてないので カン違いかもしれません(^^ゞ すいません。 でも頭を剃って 夏、炎天下に外にいたら 火傷みたいになったっつーのは この間「すべらない話」でキム兄か誰かが話していたやつなので 本当だと思います(^_^) 2007.06.30
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