■「一人じゃないから」(十翔)■ 十翔。たまにはアニキが不安に。
「アニキやっぱり此処にいた!」
港で釣り糸を垂らしていたら、後ろから声をかけられた。 振り向かなくても誰のものかわかる声。 「翔」 もう〜と両手を腰に当てて翔は説教のように言った。 「アニキってば、クロノス先生が探してたっすよ!まだ単位足らないんだからちゃんとレポート出さなきゃ駄目っすよ!」 「ああ、・・・うん」 生返事を返しながらぼんやりと思う。 卒業、したくないな。 翔の青い制服がなんだか眩しいほど目に痛くて十代は視線を逸らした。 一足先に歩き出した、青い制服。 その瞳はもう兄と作る新しい未来へ向いている。 自分とは大違いだ。 ミスターTのことも、この島に起こりつつあるという異変のことも、すべて終わった後どうするのか。 どう、したいのか。 何も考えていない。 自分の未来のビジョンが何も見えてこない。 卒業、したくないなぁ。 ずっとこのまま居られたら。 翔や、仲間たちと楽しくデュエルをして居られたら・・・。 「アニキ、早く行こうよ。クロノス先生に怒られちゃうっすよ」 翔が急かす。 十代はのろのろと立ち上がった。 それを見て翔は校舎の方へ歩き出す。 カイザーが、オレをいつの間にか追い越していった、と評した翔の青い背中。 自分もいつの間にか追い越されて、そして此処に取り残されている。 そんな風に感じた。 もう この背中に、追いつけないのではないか。 「アニキ!」 振り返った翔が十代を呼んだ。 「え」 独り言でも洩らしていたか。 十代は驚いて口を押さえた。 翔は十代の隣まで戻ってくるとその手を掴んだ。 しっかり掴んで、にこりと笑う。 「アニキは捕まえとかないとすぐ居なくなっちゃうからね」 あたたかい。 翔に手を引かれるように学園への坂道を登りながら、一人ではない手の温もりが嬉しかった。
十翔 「オトナになった」アニキですけど 皆が進路を決める中、一人だけ先のことが決まってなくて アニキだけが足踏みしちゃってるように思います。 たまにはアニキも置いていかれた気分になって不安になるといい。 つか進路決まらないと不安だよね(^^ゞ と思ったんだけど、また翔を置いてお出かけしちゃいましたよ(^^ゞ 2008.01.13
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