■「誰より先に見つけた光」(十翔)■

誰より先に見つけた光(十翔)
一期目十翔










試験会場に飛び込んだ時、真っ先に目に入ったのは明るい青空の色だった。
一番後ろ、入り口の目の前に居ただけだからかもしれない。
だけど其処だけ光って見えたんだ。





「十代くんの事ファラオって呼んでもいい?」
ファラオはないだろ、ファラオは。
そう思ったから其れは変だろって言ったら、じゃあアニキ、と食い下がってきた。
アニキもヘンだろ、同い年なのに。
だけどまあ、あだ名だと思えば別にいいかな。
なんと呼ぼうとそれは相手の自由だし、たいした問題じゃないか、とオレは考え直した。
せっかく仲良くなった同級生、しかも同室だし、そんな小さなことでわざわざ揉める必要なんて無い。

オレのことを「アニキ」って呼んで笑う翔は、可愛かったし。
なんか「アニキ」って他のやつとは違う、オレだけ別格ってカンジだし。

だけど、『アニキ』は意外にも大きな問題だった。



並んで座って、ドローパンの袋を開ける。
2個買ったうち、一個はハズレだったみたいで翔の眉毛が八の字に下がった。
「クサヤパンだぁ・・アニキ、食べるっすか?」
「お、サンキュー」
そう言って差し出すからありがたく貰っておく。
コロッケパンを小さな両手で大事そうに持って、はむはむ食ってる翔は小動物みたいで可愛い。
とか考えてる場合じゃない。
オレは貰ったクサヤパンを口に運んだ。
なんで本当の兄ちゃんが居るのに、オレのことアニキなんて呼ぶんだろ。
なんかギクシャクしてる感じはあるけど、翔がカイザーのこと大好きなのは一目瞭然だし、カイザーの方も翔のこと大事に思ってるってのは、デュエルしたらよくわかった。

謎だよなぁ。

兄ちゃんの代わり?
そんな風に翔が考えてるなんて思いたくない。
「アニキ」ならいいけど別に「お兄さん」にはなりたくないし。
アニキかお兄さんも似たようなもんじゃんと自分でも思うけど、違うんだ。
なんでだかわかんねえけど。
何か考えるのが面倒くさくなった。
オレは馬鹿だから、多分考えても分からない。
本当のところはきっと翔だけにしかわからない。

オレがわかるのは、この学園で一番強いデュエリストはカイザーで、一番になりたきゃそのカイザーに勝たなくてはいけないってことだ。

それと

「どうしたの。アニキ?」
コロッケパンを持ったまま、翔がオレの顔を覗き込んできた。
考えたり、食べたり、いっぺんにイロイロ出来なくって手が止まっていたらしい。
「んー?なんでもない」
「変なアニキー。クサヤパン好きだったよねぇ?」
「おう!」
誤魔化して、残りのパンを口に押し込む。


わかるのは、それと

翔はカイザーを「アニキ」とは呼ばないってことだ。


口の中のパンを咀嚼しながらオレは立ち上がった。
「絶対一番になってやるぞ!」
少しはトクベツ扱いな証拠だって思ってもいいよな。
兄ちゃんの代わりじゃなく、ホントに『別格』になりたい。
カイザーより、もっと。
唐突な宣言に翔は吃驚したようで動きを止めて言った。
「どうしたんすか、アニキ」
小首を傾げるその仕草が、やっぱり小動物みたいで可愛かった。



初対面から光って見えたんだ。
きっと一緒に居たらいい事があると思うんだ。
あんなに明るいんだもの。



毎日青空の下に居るみたいに、ずっと笑って過ごせるに違いない。




END






一期目十翔
まだ無自覚というか
最初は翔の方がベタベタ引っ付いてきてアニキはちょっと嫌がってるくらいだったのに
タッグデュエルあたりではもうアニキのほうから肩に手を置いたりとかしてるんすよね。
やっぱお兄さん登場が十翔の仲を深めるきっかけになったと思うの!
意図せずキューピットになってしまったお兄さん(笑)
超不本意であろうな。

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2008.09.07

 

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