■「そういうトコも好きなんだけど」(十翔)■

■意地っ張りに恋したお題


そういうトコも好きなんだけど(十翔)
VS大原小原戦後で。










「結局レポートは書かなきゃいけないんすね」
レッド寮へと戻る道を3人で歩きながら、翔ががっかりした調子で言った。
それに対して十代は呑気に答える。
「まあそう言うなって。デュエル楽しかったしいいじゃんか」
「そりゃアニキは楽しかっただろうけど」
まだ不満気な翔に隼人が宥めるように言う。
「翔、仕方ないさ、十代だからな」
「そうだね、アニキだもんね」
その言葉に翔も諦め気味に呟く。
「アカディミアは何処行っても面白いデュエリストが居ていいよな!」
「あんまり変なトコ行かない方がいいんだな」
お気楽な十代の発言に、隼人が言う。
この間だって廃寮へ入って、なんだか危険なデュエルに巻き込まれたり、退学になりそうになったばかりだ。
「わかってるって!」
「ほんとかぁ?」
「もーアニキってばデュエルするとすぐ他のこと忘れるんだから」
呆れた口調で言いながら内心で呟く。
まあそんなデュエル馬鹿なところも、アニキのいいところなんだけど。
恋すれば痘痕も笑窪とか言う奴か。
自室に辿り着いて靴を脱ぎながら翔が言った。
「アニキは将来、水戸黄門になりそうだよね」
「水戸黄門?」
同じく靴を脱いでいた隼人と十代が、頭の上に疑問符を浮かべて翔の顔を覗き込む。
その鼻先に翔はびし!と指を突き出した。
「そう。世直し決闘者の旅!」
「おお、なんか面白そう!」
決闘と聞いて、十代が話題に食いついてくる。
十代が乗ってきたので、翔も調子に乗って先を続けた。
「日本だけじゃなく、世界中を回って、迫る悪人をバッタバッタと薙ぎ倒す!」
「デュエルで?」
「デュエルで!」
翔は自分のデッキを持って印籠のように掲げてみせる。
「えーい、ひかえひかえ!このハネクリボーが目に入らぬか!このカードを何と心得る!先の決闘王、武藤遊戯より賜りし、レアカードなるぞ!頭が高い!」
「ははー」
隼人と十代がノリがよく土下座をしてひれ伏して見せた。
「で、此処でお約束!『そんな攻撃力0のカードが』」
「ひでえな。攻撃力がゼロでもハネクリボーは」
「もう、お約束なんだから最後まで聞いてよ!」
十代の抗議を途中で遮って翔は続ける。
「『そんな攻撃力0のカードが決闘王のカードのはずなどあるわけがない。決闘王の名を語る不届き者!者ども出やえ出やえ〜〜』」
「おおよくある展開なんだな」
時代劇が割と好きらしい隼人が楽しそうに言う。
「此処でアニキがデュエルディスクをチャキっとセットすると音楽!♪ちゃーちゃーちゃーちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃーちゃーちゃーちゃらら〜」
身振り手振りに曲までつけての熱演に、隼人からクレームがついた。
「まてまて、それは水戸黄門じゃないんだな」
「マツケンじゃねーか?将軍様」
「あれ、そうだっけ?」
黄門さまも将軍さまも遠山の金さんも三匹が切るも八丁堀の7人も子連れ狼も、何もかもわりと一緒くたにしているらしい翔は、あれれ?と首を捻る。
「あーでもそれ面白そう〜。デュエルし放題だぜ」
十代は目をキラキラさせて言った。
うっとりと空を見つめていた十代がいきなり隼人と翔に向き直る。
「な、翔と隼人も一緒に行こうぜ」
「え、」
「だって黄門さまなら助さんと格さんが居なきゃ始まらないだろ」
「オレはそういうのは苦手だから遠慮するんだな」
唐突な勧誘を隼人はやんわりと遠ざける。
「ちぇー付き合い悪ぃな隼人―」
ぶう、と唇を尖らせた後、十代は翔一人にターゲットを絞ってきた。
きゅ、と手を握って言う。
「翔はオレと一緒に来てくれるよな?!」


一緒に。


まるでプロポーズのようなその響きに、翔は思わず頷きそうになる。
二人の世界に入り込もうとしていた翔を、しかし隼人の声が現実へと引き戻した。
「今はそんな先のことより目先のレポートの心配した方がいいんだな」
そして現実へ戻るのは十代の方が早かった。
「ああ、そうだった!」
翔の手をぱっと離して、さっさと机に向かう。
残された翔はそのままの体勢で固まったままだ。
「何してるんだ、翔。早く始めようぜ」
そんな翔に気がついてひらひら手を振って呼ぶ十代は、まったく先ほどのやり取りなど気にしていないようだ。
アニキと一緒に、世直し決闘の旅。
翔の逞しい妄想は結構なところまで進んでいたというのに。
「も〜アニキってば」


まあそんな所もアニキらしいんだけどね。


早く早く、と急かす十代に、翔もレポートに取り掛かるため机に向かった。





END





十翔
キングゴブリンの後で。
アニキはハネクリをアンティにしてましたが
あれってデュエルキングに貰ったってのは自己申告でしかないのよね(^^ゞ
よく小原くんも応じてくれたな〜と思ったわけです(笑)
時代劇は割と好き。お約束が(^−^)

アニキは最終的に水戸黄門になったよね。
御供はゆべたんとファラオと先生だが。




意地っ張りじゃなかった;
まあ十翔だし・・


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恋したくなるお題 配布


2008.12.13

 

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