■砕けた心を拾い集めた夜(十翔)■

■ある5つの夜

 










 


ノートパソコンを弄っていた十代が、嬉しそうに声を上げた。
「お、この先の街に翔が来るらしいぜ」
どうやらプロデュエリストの情報を見ていたらしい。
この近くの大きな街でプロによるデュエルがあるようだ。
『会いに行くのか』
そう問うと十代は言った。
「なんだ、妬いてんのかユベル」
『別に』
淡々とユベルは答える。
そう、別に妬いてなど居ない。
自分は十代と一つになった。
ユベルは十代で、十代はユベルだ。
『ただ嬉しそうだな、と思っただけだ』
「そりゃ会えるのは嬉しいさ」
十代は本当に嬉しそうに笑う。
その笑顔を凝視していると、やっぱ妬いてんじゃねえの、と十代は言った。
別に妬いてない、とユベルは同じ答えを繰り返す。

十代と別々だった頃、あの頃のような胸が焼かれるような痛みはもう無いのだから。

「翔と会うと、なんつーか、ホッとするんだよな」
『安心するということか』
「そんなカンジ」
十代とユベルがひとつになって、デュエルアカディミアに帰って来た時、まるで今日戻ってくると知っていたかのように、一番に翔は走ってきた。


あの時十代の内に広がった感情を、ユベルも覚えている。
アレは確かに安堵。
凪いだ水辺のような。


「なんかウチへ帰ってきた、って気持ちになる」
オレの帰るトコ…目印みたいなカンジ?
言葉を探しながら喋る十代は、その心の内を上手く表現することが難しいようで、疑問符を付ける。
それでもユベルには十代の言いたい事が良く解った。



何処へ行っても何をしていても、帰るところは此処だ、と。
たとえ何があっても翔の居る所に帰って来ていいのだ、と。

十代は、そう、思ったのだ。





ユベルは言った。
『成程、其れはやはり妬けるな』
「妬くなよおい。お前のヤキモチは周りに迷惑だから」
十代は笑う。
十代を一人占めして、他の誰にも触れさせたくない。
そんな、昔のような身を焦がす嫉妬はもう無い。


十代の愛するモノを、自分も愛せるとさえ思える。


自分も変わったものだ。
ユベルも笑った。










END




十翔
というかアニキとユベルの話になりましたが…(^^ゞ
4期の最初にアニキが帰って来たあの夜
翔が一番に飛んできてくれて
嬉しかったんじゃないかなって


お題は此方から
corona

2013.07.06

 

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